「にーちゃん好き!頭ぽんぽんして!」
俺はずっと耐えてきた。
恋人が"頭ぽんぽん"という破廉恥な行為を実兄にせがむ姿を見て黙っていれるやつがいんのかよ。
でも他人の俺が兄弟のスキンシップに口出して変に気ぃ遣わせるのも嫌だし。
恋人の葛藤も露知らずで、のほほんとしてる九門に肘でつついてやった。
「わぁ、莇!おはよ!」
相手が十座さんじゃなかったら浮気になるようなことをした後とは思えない無邪気な笑顔で挨拶してくる。
ほんと調子狂う...。
「はぁ...十座さんもう講義だろ。そろそろ行かせてやれよ」
「ホントだ!ごめんにーちゃん!いってらっしゃい!」
「おう、行ってきます」
ようやく十座さんの手が九門から離れた。
十座さんには悪いけど、俺は兄弟じゃなくて恋人だからな。
「なに莇、嫉妬?」
俺と九門の間から千景さんがぬっとでてきた。
「はぁ!?ちっっげぇし!!このハレンチクソメガネ!!」
「んははっ冗談だよ」
とはいえずっとニヤニヤしている。からかってるんだろうな。
「九門もあんまり莇に気を遣わせ過ぎちゃ、駄目だよ?」
「っ!?」
「気を遣うって...」
「おい卯木。余計なことを言い過ぎだ」
九門がキョトンとしてる間にクソ左京が来た。
「あははすみません、2人を思ってつい」
すると千景さんはそそくさと行ってしまった。
「二人共学校はどうした」
「あ!」
「やべぇ」
__放課後
ふぅ...ようやく開放された。
薬局にでも寄ってドラコスチェックでもしようかな。
...ん?
「あ!莇ー!」
校門に九門が立っていた。
「なんでいんだよ」
「なんでって、一緒に帰りたいからに決まってるじゃん!」
たしかに恋人が放課後一緒に帰るのは普通なのか...。
「それに、今朝千景さんが言ってた気を遣わせてるっていうのが気になってさ」
あーそれか...
「もしほんとに莇がなんか気を遣ってたりしてたとして、俺わかんないからさ、
ちゃんと話してほしいなぁって」
話すって...俺が十座さんに嫉妬してるってことを話さなきゃならねーのか!?
嫉妬なんて破廉恥なことしてるって思われたくねーし、逆に九門が気を遣うことになるだろ。
そんなの嫌だ。
九門は今のままでいいんだ。
俺の我儘で十座さんとその...頭p、兄弟のスキンシップができなくなるのは九門が可哀想だ。
「気なんて遣ってねぇよ。恋人なんだし」
「そうなの?」
「ん...」
「って今莇"恋人"って言った!?」
「はぁっ!?言ってねーし!!」
「言った!言った!へへ、なんか嬉しー」
「もう...ほんと調子狂う...」
「恋人ってそういうものじゃない?
俺さ、たまーにだよ?莇が東さんとかと美容の話してるとき、莇と話が合う東さん羨ましーって思うんだよね!」
___っ!それって...
「あとさー左京さんって莇の小さい頃から知ってるじゃん?それも羨ましいなーって。
こういうのってさーなんだっけ、嫉妬っていうのかな?カッコ悪いから内緒だよ?」
「内緒って...つーかもう本人に言ってんじゃねーか」
「あ!ほんとだ!」
「おもしれぇ(笑)」
「笑うなー!!(笑)」
もやもやしてんのは俺だけじゃなかったんだな。
九門も九門なりに悩んでたのかな。
でも九門は直接言ってくれた。
「...俺も」
「ん?」
「俺もたまに、しっと、する...」
「んええええ!莇も嫉妬するの?」
「うるせー...するだろ、人間だし...」
「ねぇねぇ何に嫉妬するの?」
「ぜってー言わねー」
「えーいいじゃん。俺教えたでしょ」
「自分から行ったんだろ...」
「んはは!」
夕焼けのオレンジの空が俺らを暖かく包んでいった。
その頃商社組。
「眩しいな」
「ですね」
「商談後そのまま直帰してよかったな。良いものが見れた」
「先輩、けっこうあのcp好きでしょ」
「まぁね...でも俺以上に好きな人がいるじゃないか」
莇と九門が歩く真後ろをつけている人物___迫田ケンだ。
手には携帯を握っている。誰かと電話でもしているのだろう。
「あちゃ、左京さんか」
「電話の向こうで泣いてるよ。たぶん」
その夜MANKAI寮ではなぜか誰の誕生日でもないのに、いつもより豪勢な臣の手料理が振る舞われたとか。 END