ようやく手持ちの仕事が終わったので映画を見に行くぞ。
またぞろサンサン劇場がインド映画まみれで日本国インド領と化していますが、今日はTOHOシネマズ梅田へ。
というわけで見てきたのは「哀れなるものたち」!
写真は今さっきチェックしたら反射でがっつりリアルボディが映っていたので掲載はなし。
本作は以前に大阪ステーションシティシネマに行ったときにチラシで知った作品。
投身自殺した女性の胎児の脳を取り出してその女性に移植されて蘇生した主人公・ベラ・バクスター。彼女は親代わりの天才外科医ゴッドウィンの元を飛び出して世界中を旅するようになりますが……。
いやーなんというか、変な映画でした。上記の設定だけを見るとホラーのような気がしますが、R-18なのでグロいシーンはあるもののホラーではない、恋愛要素はあるが恋愛映画ではない。
本作をジャンル分けするとしたら、幻想怪奇映画あるいは滑稽譚といったところでしょうか。本作は前述の通りR-18なのでエロもグロもなんもかんもおっぴろげなわけですが、それはメインの要素ではなくエッセンスやスパイスでしかないと感じました。
まず本作の主人公であるベラ・バクスターのキャラクターとしての造形があまりにもグロテスクかつ無垢。成人女性の肉体に胎児の脳を移し替えられて蘇生した彼女は、当初は言葉はたどたどしく動作はぎこちなく、一般常識もないような振る舞いをします。しかし物語が進むにつれ、彼女は周囲で起こるさまざまな出来事からさまざまなことを学び、徐々にその情緒を成長させていきます……というわけではおそらくないんだよなこれが。
こういう話だと、話の骨子は「自我を持たずに生まれた存在の成長物語」とかになりそうなものですが、おそらく彼女の自我は外部に発露していないだけで初期段階ですでに発生していたと感じました。しかし、その自我は表面化していません。そのため、ゴッドウィンの助手でありベラの世話している内に彼女に好意を抱くようになったマックスや、放蕩三昧でベラと駆け落ちしたダンカンをはじめとする男たちは、それぞれ自分に都合のいい理想の女性像を彼女に投影していると感じました。
これはただ単にベラの表面的な自我が希薄だからという理由ではなく、そもそもこの時代の男性→女性の支配的意識を反映したものなんじゃないのかな。
そしてもうひとつ印象的だったのがマックスの当時の宗教観を反映した「女性は貞淑であるべし」といった言動に対するベラの行動。これに対してベラはそんなことは一切お構いなしで人前で自慰行為に及ぶなどの問題行動をやめません。さらにはダンカンと駆け落ちしたあとは彼との激しいセックスに耽り、さらには娼館に転がり込んで娼婦として客を取るようになります。
このように、ベラは自我の表面化こそ希薄なものの、周囲から投影された理想の女性像にも社会的規範にも縛られず、自由に、ひたすら自由に行動します。その行動は時には醜悪で愚かしいものにも見えますが、そこには確固たる自我の輝きを見た気がします。
言葉もあやふやだった彼女は急速に知識を吸収し、やがて自由と平等を求めるようになります。しかし、これもまたただ単に「女性の地位向上と社会進出」というだけではない気がする。
ダンカンと駆け落ちしてゴッドウィンの屋敷を出ていった彼女の選択は彼女の自由意志によるものですが、それで彼女が完全なる自由を得たかと言うとそうでもありません。彼女を連れ出したダンカンは彼女を都合よく利用・支配しようとしていますし、彼女はまだその情緒が十分に発達していない。つまり彼女は「檻の中を出たと思ったら一回り大きな檻の中にいた」という状況なわけですね。いやまあその割にはダンカンは完全にベラに振り回されてさんざんな目にあってるわけですが。
そもそもベラのキャラクター造形の核には、「二重性」というファクターがある気がします。成人女性の肉体にその助成が妊娠していた胎児の脳を移植されたという「母親でもあり子供でもある」という二重性、成熟した大人としてのメンタリティと無垢で無知な幼い子供としてのメンタリティを同時に持つという二重性、ベラ・バクスターであると同時に本来の身元・ヴィクトリアであるという二重性、そして彼女の世界を何重にも分厚く取り巻く社会・世界という多重性。このベラというキャラクターにはいろんな要素の重ね合わせがあると感じました。
二重性や多重性といえばこの作品の味わいもそうなんですよね。シリアスな中に笑えるシーンやコミカルな描写もあり、今wikiを見たらジャンルは「SFラブコメ映画」と表記されてました。ラブコメかこれ……? とも思いましたが、思えば基本骨子が「一人の女性を複数の男性が取り合いつつ振り回される」であると考えると確かにラブコメだよな……そうかな……そうかも……。
などとシベリアンハスキー顔になってしまいましたが、実際本作のあのひっでーオチを見ると確かにラブはあるしコメディもあるのでラブコメでいいや。(投げやり)でも実際あのオチには一種の爽快さがありましたしハッピーエンドであることは間違いないのでいいんじゃないでしょうかね。ベラの前途に幸あれ!