「……代償は」
 ワンはかろうじて、それだけの言葉を絞り出した。
「その代償に、貴様らは何を求めるんだ、俺に」
「あなたにも、またこの計画から派生する別の計画に参加してもらいたい」
「……」
 銃を握った手をだらりと下げたまま、ワンは男の話を無言で促した。
「我が社で開発中の試作機のテストパイロットになってもらいたい。本機は緊急時に装甲をパージしての超高速機動を行うためのテストベッドとなる。また、本機体には先ほど説明した計画から派生した研究を元にして作られた、人間にごく近いサポートAIを搭載している。本機体とともにこのサポートAIの成長と経験値を高める任務を、君にお願いしたい」
 男の話が、体の表面で滑るように頭に入ってこない。ワンは迷っていた。その迷いは、この提案に乗るために求められている代償そのものよりも、実の妹を近衛隊のしれない計画に巻き込んでしまって良いのかどうかのほうが大きい。
 これは救いの手だと思う気持ちと、これは悪魔の誘惑だと叫ぶ声が、ワンの頭の中を性格に半分づつ占めていた。その葛藤が、ワンの思考を縛り上げている。
 男は、ワンの葛藤を十分見届けたとでも言うかのように立ち上がった。
 気がつけばワンは、見たこともないタイプの人型兵器の前に立っていた。
 全体的なシルエットは、凍項電子開発公司の代表的なモデルである「[[rb:天人 > ティエンレン]]」に似ているが、背面、脚部の裏、肩部装甲が大きく膨らんでいる。
「ベクターノズルだ。装甲をパージすると露出し、重量を大幅に軽減された機体の高速機動を実現する」
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