「無論、蘇生措置が行われた場合、当該人物の社会的・個人的ステータスは速やかに引き継がれる。これにより、優秀なパイロットの損耗を防ぐ。しかし、この計画は未だ実用段階に至ってはいない。データが必要だ。そこで――」
 そこで男は言葉を切った。男の感情の感じられない爬虫類のような冷ややかな眼差しが、ワンを、その内心を見透かそうとするかのようにじっと見つめている。
「貴女の妹を、この計画の被験体として迎えたい」
 ワンは絶句した。そんなことが可能なのか?という疑問からではない。
 何度願ったことだろう。朝目を覚ましたら、ルイリーが体の自由を取り戻していることを。
 何度思い描いたことだろう。ベッドから起き上がれなかったルイリーが、普通の子供と同じように自分の足で走り回っている姿を。
 人間の意識を、人格を、電脳にコピーする。そうすることで死んだ人間が蘇る。しかし、そうして蘇生された人間は果たして元の人間と同じと言えるのだろうか。
 義足や義手とはわけが違う。全身が生身の体ではなくなる。
 確かにルイリーの体は不自由だ。ルイリーの魂は、その不自由な体に囚われている。しかし、生身の体を捨て、作り物の肉体を得たところで、それはルイリーの魂を新たな牢獄に閉じ込めるだけなのではないか。
「返答の期限はこちらからは指定しない。どのみち、それほど余裕がないことはあなた自身がよくわかっているだろう」
 男の眉間に押し当てた銃口が、情けないくらい大きく震えた。男は人差し指を立て、その銃口をゆっくりと眉間から外した。
「良い返答を期待している」
 その言葉と連絡先を残して、男は去っていった。
 その後、自分がどうしたのかは覚えていない。戦闘後の混濁した意識の中でさえ、その選択を思い出すことをワンは拒んでいた。
 
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