その脳裏に、数ヶ月前の出来事が去来した。すべての始まりはそこだった。
アルテラは、その原型となった地球と同様に、境界線が敷かれていた。ただひとつ違うのは、それが国家ではなく企業によるものだという点だ。
必然的にアルテラにおける戦争の多くは、企業間闘争である。闘争は兵器需要を生み、兵器需要は闘争を生む。蠱毒の壺のように、その闘争は激化していった。
そして、その蠱毒の壺の中に自ら入り込む者が出始めた。傭兵たちである。
傭兵たちは各々の企業に分かれ、アルテラで使用されている主要人型戦闘兵器を駆り、闘争を繰り返してきた。
当然その中には優劣が、強弱が、そして貧富が生まれた。
ワン=チャンはその中で、弱者ではなかったものの貧者だった。アルテラには地球と同様の国家はないが、移住したさまざまな民族や文化がそのまま、あるいは姿を変え根付いていた。中国人系の血筋を持つワンの属するコミニュティは、特に貧富の差が激しい環境だった。幼い頃からその価値観の中で育ってきたワンもまた、その成人する頃にはその価値観を神経の隅々にまで行き渡らせていた。
当然、ワンは成り上がれば一気に富裕層に到達できる傭兵の道を選んだ。しかし、そのスタート地にもすでに貧富の差が生じていた。豊富な資本やツテ、コネを持っているものは高価な機体やパーツを入手し、そうでないものは旧式の機体をだましだまし使うことを強いられる。さらに、裕福なものは傭兵としてのちいをより早いスピードで駆け上がっていき、企業に所属しその援助を得られるように慣れはその貧富の差は、もはや埋められないほどに大きくなる。
アルテラで傭兵として戦っていくには、まずは名を上げて企業に所属することが唯一の近道だという認識が一般的だ。しかし――ワンの認識は異なっていた。
ワンには妹がいた。両親を戦闘に巻き込まれた亡くしたワンにとって、妹は唯一の家族だった。