祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者も遂にはほろびぬ、偏ひとへに風の前の塵におなじ。
平家の物語の冒頭を「源平討魔伝」で覚えた世代のみなさんこんにちわ。「源平討魔伝」ってなーに?というちびっこのみんなはパパやママに聞いてみてね。「月風魔伝」と間違えるとおっさんゲーマーに取り囲まれるので気をつけようね。
というわけで平安時代にあるまじきやたらとディストーションの効いた琵琶と時代を600年くらい先取りしたパフォーマンスでみんなのハートを那須与一の精度で射抜いたこの作品、久々のマサラ上映です!
わたくし人形使いは本作のマサラ上映には通算3回参加しているんですが、実は発声可能マサラ上映は今回が初めて。なので今日は向こう2週間はデスボイスになる覚悟で挑んできました。
今回も待合室には琵琶が鎮座しております。毎回毎回なんなんだこの映画館は。
そして今回も色々とおみやげを頂きましたが、平らげた後に写真を撮るのを忘れているのに気が付きました。いくつになってもこんな感じです。
頂いたのはお煎餅やらのど飴やらチョコレートやら。今回の塚口は半分ライブ会場なので喉を酷使したあとののど飴は特にありがたい。そしてマサラ上映のお約束である上映終了後の記念写真を持ち帰るためのクリアファイルも非常にありがたい。さらに帰宅後のレポ書きのエネルギーとなるお菓子類も非常にありがたい。
感謝の気持ちに包まれながら上映開始を待ちます。そして上映時間となった館内はこんな感じ。
上映前のスクリーンには今回のレギュレーションが表示されています。
要約すると、
・鳴り物、手拍子、紙吹雪はOK
・サイリウムなどの光り物、クラッカーはNG、なぜなら600年前にはなかったから
世界観を大切にする映画館、サンサン劇場。
そして館内には何人もの600年前の装いの方が。塚口は大洗になったりインドになったり平安時代になったり忙しいなあ。
まだ上映前だというのにすでに完全に仕上がっている感じの館内。そこに鈴を持って現れたるは我らがシネマイスター☆トム!!
マサラ上映の楽しみはたくさんありますが、毎回この戸村支配人登場で一気にボルテージが最高潮にブッ飛ぶ瞬間がいちばん楽しみかもしれん。
さて、今回マサラ上映される「犬王」では数々の楽曲が披露されます。そのため楽曲シーンではスタンディング&歌唱OK。しかし、やはりいきなり歌って踊るのは難しいもの。そのため今回は特別に練習の時間が設けられました。
というわけで前説の最中と突如として劇中曲でも最大級の盛り上がりを見せる「鯨」の練習パート開始!
はい、もう言うまでもありませんが練習と言っても完全に全力! 響き渡る戸村支配人による「鯨」のアカペラに観客席からは同じく全力での手拍子とコールが応えます。全力には全力で応じる映画館、サンサン劇場。
この全力の練習によっていきなり成人が1日に必要とするカロリーの50年分を消費しましたがサンサン劇場では地形効果によってHPが無限回復するので問題ありません。
さて館内もいい感じにというか過剰に温まってきたので、いよいよ室町ロックフェス「犬王」開催です!
もう最初の「ANIPLEX」の音圧がすごいんですよねいつものことながら。音が「点」じゃなくて「面」で来る。
同じく音がすごかったのが草薙の剣を抜いたシーンでしょうか。音が腹に来る。今まで塚口ではさまざまな映画を見てきましたが、やはり音ですよ音。この音響は自宅では決して味わえません。
自宅では決して味わえないといえば楽曲シーンですよ。前述のとおり本作の楽曲シーンはスタンディング&大合唱OKなんですが、「独言」から始まる「犬王 壱」「犬王 弐」の連続大合唱はなんかもうたまらん。宗教的法悦すら覚える。この一体感、この高揚感、ここでしか味わえません。
特に、わたくし人形使いは前述の通り発生可能マサラ上映は今回が初めて。そのため思いっきり声を出して、さらにみんなと声を合わせて大合唱できてもう幸せ。
小中学校では「合唱」って行為は当たり前に行われており、さらに言うならどちらかといえば嫌だったという人も多かったものだと思います。しかし考えてみれば学校を卒業したあとでこれだけの人数でこれだけの歌を大合唱する機会なんてそうそうありませんよね。そういった意味では塚口のマサラ上映は本当に貴重な機会だと思います。というか塚口がやってることって基本的に「そんな機会はそうそうないこと」ばっかなんですが。
「腕塚」のあたりはもう完全に我々は犬王と友魚の舞に熱狂する平安ピープルの一員となっていました。毎回言ってることですが、塚口のマサラ上映は映画鑑賞+α。この「+α」の部分にはさまざまな意味が込められていると思いますが、わたくし人形使いはこの「+α」は「観客が作品の中に入り込める」という要素を強く感じています。特にいわゆるオタクは主人公やヒロインといったメインキャラクターになりたいという欲求よりは「主人公とヒロインを取り巻くモブになりたい」「壁になりたい」「床になりたい」といった異常な特殊な欲求を持っているもの。わからない人に「逆襲のシャア」で例えると、アムロやシャアではなくラストでアクシズを押し返すシーンで爆散するギラ・ドーガのパイロットになりたいという欲求です。
本作のマサラ上映ではそうしたモブになりたい欲求を表面張力ぷるっぷるになるまで満たせます。それがクライマックスになるのが「鯨」のシーンでしょう。今回は練習もしたので観客はパーフェクトに仕上がっており、これまでのマサラ上映いちのでっかい鯨を楽しめました。コール&レスポンスあり、戸村支配人自ら仕掛けた天井の鯨など、ただでさえ盛り上がるシーンが劇場と観客の力によってさらなる高みに上り詰めていきます。特にあの巨大なクジラが浮かび上がるシーンの紙吹雪の美しさよ。
やはり作品にはマサラ上映との相性というものがあると思うんですが、本作は特にマサラ上映との親和性が高い作品だと言えるでしょう。今回も関西の紙吹雪職人・ねんぶつさんが参加されていたのでその紙吹雪の美しさはもはや筆舌に尽くしがたいものでした。というかあの高さとあの密度で紙吹雪を撒けるのって本当にすごいと思います。まさに匠の業。
「鯨」の鯨が浮かび上がるシーンでは火の粉のごとく舞い上がり、「竜中将」ではスタンディングからの大合唱に負けない、文字通りスクリーンを覆い尽くさんばかりの紙吹雪の美しさが頂点に達するのが、全てが終わった後の桜舞のシーンでしょう。
以前参加したマサラ上映のレポでも同じことを書きましたが、やはり今回も同じことを書かざるを得ません。なんと美しい静寂か。
「犬王」のマサラ上映のここすきポイントはそりゃあ無数にあるのでひとつに絞るなんて土台無理な話ですが、あえて一つだけ挙げろと言われたらわたくし人形使いはこの桜舞のシーンをノータイムで選びます。
それまでの狂騒とは正反対の静寂の中、紙吹雪が舞い散る音だけが館内を満たす。このシーン、この瞬間は「犬王」という作品だけでも、劇場だけでも、観客だけでも成し得ない、それらがまさに三位一体となって初めて実現する、ここでしか味わえない瞬間だと断言できます。
――そしてそこからの犬王と友魚の600年の時を経ての再会、そしてエンドロールがまた穏やかな余韻に浸れてまたいいんだ……。
といった感じで館内の明かりが戻り、ひとときの夢が覚める時間。しかしその夢のかけらは確かにわれわれの足元に降り積もっていました。
夢のかけら、降り積もりすぎ。
毎度のことながらどっから出てきたんだよこの大量の紙吹雪は。足元フッカフカでした。
さておき、いやー今回も楽しかったですね。マサラ上映恒例の初めてアンケートでも、初めて塚口に来た人、初めてマサラ上映に参加するという人、初めて作品を見るという人が絶えないことから見ると、塚口はどんどん新規層を取り入れていると感じます。
これからも年末にかけてほとんどヤケクソ気味のマサラスケジュールがわれわれを待っているので備えねば。
それではみなさん、また次のマサラ上映でお会いしましょう。