幻想郷。
騒がしい四季異変が終りを迎えた、とある残暑のころのできごと。
四季異変がおさまった後も、騒がしい妖精たちは騒がしいままであった。
しかし、騒いでいたのは妖精たちだけではなく……
「あはは、これ楽しいね!」
「お、ルーミアも分かってきたか! まだまま踊り足りないでしょ?」
「うんうん! なんだか、全然疲れないの!」
「まだまだ夏はこれからだもん! 全力で楽しまなくちゃね!」
「私も私もー!」
楽しくも激しい音楽。
疲れを感じることもなく踊り続ける少女たち。
踊りをやめようとする者も、自分たちの身に起こっている小さな異変に気づく者も、
まだ、誰もいない。
「はー……今日もあっついわねー。この暑さ、いつまで続くのかしら」
いつものようにぼやきながら境内の掃き掃除をしているのは、幻想郷の住人なら人間でも妖怪でも誰でも知っている紅白の巫女。
博麗霊夢は、昨日と同じようにさんさんと照りつける太陽をうらめしそうに見上げています。
その頭上に、ふっと影が差しました。
「よお霊夢、今日もちゃんと巫女さんしてるか?」
境内にふわりと着地したのは、ほうきにまたがった女の子。
黒い服に黒い三角帽子という由緒正しい魔女ルックに身を包んだその女の子は、やっぱり幻想郷の住人なら人間でも妖怪でも誰でも知っている普通の魔法使い。
霧雨魔理沙はいつものように、勝手知ったる何とやらといった感じでさっさと母屋の縁側に歩いて行ってしまいました。
「はー……きょうもあっついなー。この暑さ、いつまで続くんだろうな」
さっきの霊夢と同じようなことを言いながら脱いだ三角帽子で顔を仰いでいる
「ちょっとー、うちに来たんだからお賽銭くらい入れていきなさいよね」
「出世払いでな」
とか言いながら、魔理沙はごろりと横になります。そんな魔理沙の様子に、霊夢もため息ひとつ。掃除を中断して母屋に上がっていきました。
「あんたがいきなり来たせいでやる気がどっか行っちゃったわ。きゅーけーきゅーけー。麦茶くらい出してあげるからありがたく思いなさいな」
「おー、気が効くな。愛してるぜ霊夢。愛してるついでになんかスイカかなんかないのか」
「んぁー、呼んだー?」
「お前じゃないっての」
廊下の向こう側からふらふらの千鳥足で歩いてきたのは、不羈奔放の古豪の異名を取る鬼、伊吹萃香でした。
「ちょっと萃香、角気をつけなさいよね。あんたこないだも障子に穴開けてたでしょ」
「えぇー、そーだっけー?」
足取りと同じくらいふにゃふにゃな口調で答える萃香。