さて、いよいよ明日はコミケへの出発日です。
 コミケの準備のほぼ終わったので、体調を崩してたせいでずーっと後回しになってたこの作品を見てきました!
 上映終了日が未定だったので油断してたら、急遽今週木曜で上映終了ということで慌てて見てきました。
 ちなみにパンフレットだけは以前にラスト1部になってたので先に購入してました。
 夏休みシーズンではあるものの今日は平日でしかも上映時間は昼の12時。しかし、最終日ということ、シアター1という小さめのハコだったということもあってか館内はかなり埋まってました。
 本作のタイトルともなっている「ランガスタラム」とは作品の舞台となる村の名前。旧時代的な封建制が未だに残るランガスラタムでは、村人たちの無知や無教養をいいことに借金を水増しして搾り取る労働組合「ソサエティ」と、ソサエティを牛耳る人物「プレジデント」に支配されています。主人公であるチッティ・バーブは先天的に難聴を患うも、気にすることなく日々を楽しく生きています。そんな中、ドバイで働いているチッティの兄であるクマールがランガスタラムに帰省。プレジデントに支配されている現状を変えようと、今までプレジデントに逆らうことを恐れて誰もできなかった村長選挙に立候補するのですが……。
 さて感想なんですが、まず非常に印象的だったのが作品全体に漂う閉塞感でしょうか。
 物理的な意味で見れば、本作の舞台であるランガスタラムは別に壁に囲まれているわけでもない開放的な状態です。そんな自然豊かな村で、村人たちは日々の生活を送り、歌い、踊っています。
 しかしそうしたランガスタラムの生活の根底には、前述のようなプレジデントによる支配・搾取構造が根付いており、村人たちがいくら笑顔で楽しそうにしていてもその支配構造の影が常にスクリーンから離れません。
 本作ではインド映画お約束のダンスシーンがあるんですが、そのダンスシーンの楽曲にしてもやはりただ単に明るく楽しいものとは言い難い。特に本作のテーマ曲とも言える「この世は芝居の舞台」は、一見明るいアップテンポの強調でありながら、歌詞は「俺たちゃ革の人形さ」というランガスタラムという小さな村に閉じ込められた自分たちの境遇を嘆く内容となっているのがなんとも……。しかもこの「この世は芝居の舞台」のメロディライン、作品の随所で曲調を変えて何度も使用されているので、見ている方は何度も何度もことさらにこのランガスタラムの現状がどういうものかを刻みつけられる思いでした。
 わたくし人形使いは本作は今回が初見だったんですが、twitterから漏れ聞こえてくるインドの民、塚口の民の感想からは、「RRRやバーフバリとは毛色の違う作品」「RRRのようなヒロイックな作品、英雄譚ではない」「悲しい……」「悲しい……」「チッティ……(嗚咽)」といったようなすすり泣きが聞こえてくるので、なんとなくいわゆるエンタメ系、アッパー系の作品ではないということは察してました。実際に見てみると本作はコミカルなシーンもあるにはあるんですが、全体的には非常にシリアスかつヘビー、そしてなんとも言えない閉塞感を覚える作品でした。
 そして本作の主人公であるチッティの「難聴」という設定。本作ではこの設定が、ただ単にありきたりなハンディキャップとしてではなく本作のテーマやストーリーに大きく関わる要素として機能しているのが非常によかった。まあこの「難聴」という設定がいちばん効果的に活かされてたのが、最愛の兄であるクマールの今わの際の言葉が難聴のために聞き取れなかったというシーンなんですけどね……(滂沱)。
 しかもこのクマールの最後の言葉が最後の最後ですべての事態の黒幕の正体を暴くヒントになっているというのが、ただ単に悲劇的なシーンで終わっていないのがまた、クマールがやっていたことは無駄ではなかった、全てが繋がっていたという……(滂沱)。
 前述の通りチッティは難聴という障害を負いながらそれを気にすることなく暮らしていたんですが、この出来事で初めて自分の難聴を憎むようになったというのがあまりにも悲しい……。
 またこの難聴のため、チッティは上記のシーンのみならず、日常的にその場ではあまり周りの情報を取得できず、あとから助手や周辺の人からその意味を聞いて初めて理解するということが多くなっています。そのため、基本的に彼の行動は後手に回ることが多い。それがともすれば愚鈍に見えてしまうのがまた悲しい。祖母を侮辱した言葉を吐きかけられてもその場ではそれを理解できず、あとから怒りに身を任せるかれの姿には悲しさとともにある種の滑稽さすら感じました。
 そもそもチッティはあまり頭で考えるキャラクターではなく、感じたままに振る舞うキャラクターなので、その後手に回りがちな後悔や悔しさ、怒りをダイレクトに表現しているのキャラクター性が、非常に純粋で朴訥な人物像を構築しています。
 わたくし人形使いは、ラーム・チャラン氏が主役を演じる作品としては「RRR」の次に本作を見たんですが、ラーマが感情を抑えた聡明でストイックなキャラクターであったのに対し、本作のチッティは自然児と言った感じの良くも悪くもストレートかつダイレクトなキャラクターで、でも間違いなく両者ともに間違いなくラーム・チャラン氏という俳優の味がしっかり出ていてすごさがとてもすごいと思いました。(突然の語彙喪失)
 ひとつびっくりしたのは物語の着地点です。「その方向性でオトすのか!?」と思いました。
 本編の展開からして、ラストは村を支配していたプレジデントを倒し、村人たちが新しい村長を得るというラストだと思ってました。実際、プレジデントはいったんは姿をくらますもののクマールを殺された怒りに燃えるチッティと村人たちに追い詰められて発見・殺害され、新しい村長にはチッティの仲間であるランガンマという女性が収まることになります。
 しかしチッティの復讐は実は終わっておらず、クマール殺害を命じた真犯人はまだ発見されていないことが判明。そこで真犯人のヒントとなるのが前述のクマールの最後の言葉でした。ふとしたヒントから解読されたクマールの最後の言葉は真犯人の名前。そしてその名前はチッティに協力してくれていた議員であるムールティの助手のものでした。
 そもそもムールティは自分の娘であるパドマと下級カーストであるクマールが恋仲であることに不快感をつのらせており、そのために助手に命じてクマールを殺害したことがラストで明らかになります。
 そう、ランガスタラムにはびこる病根はこのレベルの深さにあったのだということを観客はここで見せつけられるわけですよ。悪人ひとり倒したところですべてがひっくり返るわけではない、というこのある種のニヒルさはインド映画特有のものかも。
 チッティは実は全てを知った上で本編冒頭で交通事故に遭い意識不明になったムールティの世話を2年間に渡って行っていたことが判明。最後の最後でムールティにすべてを告げるチッティの姿、その表情にはもはやかつての彼の姿はなく――。
 このラストの展開はとても重かった……。
 といった感じで、事前にTwitterから漏れ聞こえてきた通りのシリアスかつヘビーな作品でした。たしかにこれは人によっては何回も見るのが辛い作品かもしれん……。
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塚口サンサン劇場「ランガスタラム」見てきました!
初公開日: 2023年08月10日
最終更新日: 2023年08月11日
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