目の前の光景が、目まぐるしく入れ替わっていく。もう何が見えているのかわからない。いやちがう。目で見ているんじゃない。頭の中に直接流れ込んできている。
それは――神様の声、だったのかも知れない。神様の声が、僕の頭の中で響き、弾け、見えた(・・・)。神様の声が。
やはり人間には、神様の声をそのまま聞き取ることができないんだ。僕は頭の中に流れ込む大量のイメージに自分の思考を押し流されそうになりながら、ぼんやりとそんなことを思った。
頭の中に流れ込む神様の声は、激しい光だった。その意味を感じ取る前に、僕の頭の中は次々と爆発する光で埋め尽くされた。その光の中に、響き渡る神様の声の中に――ひとつだけ、なぜか僕に分かる声があった。
恐れ。そして悲しみ。――引き裂かれることの悲しみ。
それは、僕はこの世で一番良く知っている感情だった。
生まれたときから、僕と繋がっている弟。この世でたったひとり、僕と同じかたちをしている、血を分けた弟。
生まれたときから一緒にいる弟。ひとつの心臓を共有しているということは、命すらも共有しているということだ。
だからこそ僕は、ときどきそういう想像(・・・・・・)。
もし、自分と弟が引き裂かれることになったら? もし、自分の半身とも言える存在がある日を境に失われてしまったら?
誰でも、夜の闇の中に怪物の姿を空想したり、今この瞬間に突然この世が終わってしまったらどうしようと想像したりすることがあるだろう。
僕にとっては、どんな恐ろしい怪物よりもこの世の終わりよりも恐ろしいことだった。弟と引き裂かれることが。
そんなことを思わず想像してしまったときと同じ恐れと悲しみが、頭の中に響く神様の声にはたしかにあった。
どうして? と思った。
だって、神様なのに。神様は僕らとは違う、完全で完璧な存在のはずなのに。その万能の力で、僕らを救ってくれるはずなのに。
どうして神様が、人間と――僕と同じように、引き裂かれる恐れと悲しみを抱いているんだろう。どうして、そんな人間と同じような感情を知っているんだろう。
その疑問の答えを得るその前に、僕の意識は真っ白な空白に塗りつぶされた。