弟はいつも通り、僕の隣で眠っている。
「……弟は、神様には会ったことが?」
僕が起きているときは弟は眠っており、弟が起きているときは僕は眠っている。だから当然、僕らはお互いの体験や記憶を共有しているわけではない。
「いや、まだだ。しかし近いうち、12号が覚醒しているときに同じように神のいる場に連れていくつもりだ」
「そうですか……」
そう返事を返しながら、僕はいろんな事を考えていた。
本当にいる神様は、いったいどんな姿をしているのだろう。
弟は、その神様の姿を見てどう思うだろう。
そんな考えが、僕の頭の中を行ったり来たりしているあいだに、エレベーターは静かに止まった。
プシュッという空気が抜けるような音を立ててエレベーターの扉が開き始めたとき、僕の頭の中はふっと静かになり、ひとつの考えだけが残っていた。
本当にいる神様に出会ったら、その神様がどんな姿をしていても、弟の幸せを祈ろう。
だって、本当にいる神様に出会ってするべきことなんて、それしかないじゃないか。
「――行こう」
「はい」
1号さまに促され、僕はゆっくりと電動車椅子をエレベーターの外に進ませた。
最初に僕を迎えたのは、病室の照明よりも眩しい光。思わず手で顔をかばう。
ようやく明るさに慣れた僕の目に飛び込んできたのは、むき出しの岩盤。そのところどころに置かれたたくさんの機械、物々しい防護服のようなものを着込んで作業を行っている人々。そして――。
何重にもなった、大きなガラスの箱。その中にいる、なにか。
それが視界に入った瞬間、今まで感じたことのない感覚が背筋を走ったのがはっきりわかった。
反射的に隣にいる1号さまの顔を見上げる。1号さまは何も言わずにうなずいた。
ごくり、とつばを飲まずにはいられなかった。
ガラス越しの姿ははっきりとは見えなかったものの、それが自分たちとはまったく違う存在であることがわかった。つまり、この大きな空間の中にあるガラスの箱の中に閉じ込められているのは――。
僕は自分でも知らないうちに、まるで見えない糸に引かれるようにして車椅子を進めていた。
その後を、1号様が静かに着いてくるのが気配でわかった。
大きなガラスの箱に近づくにつれて、その中にいるものの姿が少しずつ鮮明に見えてくる。
「12号。これが、我々マルクト教団の擁する実在する神――」
ゆっくりと、まるで息をするように伸び縮みしているそれは、僕がこの教団の外に出たことがないことを差し引いても、僕が知っているどんな生き物とも似通っていないものだった。
これが――。
「創造維持神だ」
その姿は、「大きな肉の塊」としか言えない、異様なものだった。
創造維持神。本当にいる、神様。
「神様」という言葉を聞いて、こんな姿を想像する人なんかいないだろう。
でも、僕にはこの異様な姿をしたなにかが神様であることがすんなりと受け入れられた。
車椅子をさらに近づけて、むりやり体を乗り出して、ガラスに手を伸ばす。
ガラスに触れた瞬間、体が電気に打たれたみたいにびくんと跳ねた。