神さまは、自分の姿に似せて人間を作ったって話を本で読んだ。ということは、神さまは人間と同じ姿をしているということだ。人間だけが、この世のどんな生き物とも違って神さまと同じ姿をしている。それはとても特別なことだと思う。
なら、ぼくの弟がぼくと同じ姿をしていることも、きっと特別なことなんだろう。ぼくは、そう思う。
体を横たえた真っ白で清潔なベッド。左を見れば、そこには見慣れた――それ以外見たことがない弟の安らかな寝顔。
ぼくと弟は、生まれたときから一緒だ。それはものの例えじゃなく、ぼくらは腰のあたりで体が繋がっている。だからぼくらは、生まれたときから一度も離れたことがない。そして――生まれたときから声を聞いたことがない。言葉をかわしたことがない。
ぼくと弟は、ふたりでひとつの心臓しか持っていないと、教団の偉い天使様が言っていた。だから、どちらかが起きているときは必ずどちらかが寝ていないといけないのだと。
ぼくらは物心ついてから、ずっとここ、「マルクト教団」で生活している。まだ子供のぼくにはよくわからないことも多いけれど、ここではみんなが天使様みたいないろんな形や大きさの翼を背負っている、まるで天国みたいなところだ。その中でもここで特に偉い天使様である1号さまが、ある日ぼくにこう言った。
「お前たちは、神に仕える使命を持って生まれてきたのだ」と。
……そういう言葉に含まれたいくらかの慰めや哀れみを感じ取ってしまうくらいには、ぼくは周りの大人たちからどう見られているかはわかっていた。
たしかにぼくらは普通の姿をしてはいない。他の人間と違う姿をしているということは、神さまとも違う姿をしているということだ。でも、神さまが自分と同じ姿をした存在として人間を作ったというのなら、ぼくらと同じ姿をした神さまもいるのかもしれない。
1号さまはおっしゃった。「お前たちは、神に仕える使命を持って生まれてきたのだ」と。それならその神は、ぼくたちと同じ姿をしているのだろうか……。
(パート分け)
その日は、朝生きたときから何故か胸騒ぎがした。なにか、とても大切な決断を迫られる日が、いきなり訪れたような、そんな予感があった。