個人的にかなりの注目作であったこの作品、ネタバレが来ないうちに見ようと思ってたので今日急いで見てきました!
 今日は日曜+比較的小さいシアターということで館内は満席。例のダンス動画がSNSでバズってたからでしょうか。
 さて感想なんですが、ああ暗黒SFぅ~~~~~!!!
 映画を見る際には、人は誰しもいろんなことを期待するもの。もちろん場合によってはその期待が満たされないこともありますがそれも経験。たまーにステーキ屋の看板出しといて焼けたサンダルの裏が出てきて心の中指をブッ立てそうになることもありますがそれも経験。
 わたくし人形使いは本作には濃厚な暗黒SF成分を期待してたんですが、本作はその期待を120%満たしてくれました。ありがとうブラムハウス。ありがとうジェームズ・ワン監督。
 交通事故で両親を亡くした少女ケイディは、叔母であるジェマに引き取られます。自分の抱える仕事とケイディの世話や心のケアの両立ができないでいるジェマは、自分が密かに開発しているAIロボット「ミーガン」のプレゼンも兼ねてミーガンをケイディの友達として引き合わせます。ケイディはミーガンによって明るさを取り戻し、ジェマは成果が認められて順風満帆になったかに見えたのですが……。
 まず言及しておきたいのはミーガンの造形。やろうと思えば完全に人間そっくりにすることもできたはずなんですが、あえてミーガンをいわゆる「不気味の谷」を超えていない作りものっぽさが残る造形にしてるのが実に良い。そしてさらにCGにはせずにメイクを施した子役が演じるという形式にしてるのが完全に正解に結びついたと思います。このビジュアルインパクトはこのやり方でしか出せなかったと思います。
 ケイディ第1ユーザーとして登録したミーガンは、たしかにケイディにとっては理想のお友達となり、ジェマにとっては雑事を全部こなしくれる理想的なおもちゃとして機能します。……そう、ミーガンは二人の理想を叶えてくれる存在なんです、良い側面でも悪い側面でも。
 こうした作品では、ロボットや人形などは自我に目覚めて殺戮に走るといった描写がされることが多いですが、本作におけるミーガンの行動は自我に目覚めてのものでも暴走したものでもなく、ただ純粋に周囲……正確にはケイディとジェマの機能不全家族を学習したもの、周囲に望まれたものだと思います。この辺がはっきり明示されてないのは「アイうた」と同じですね。
 そもそもケイディとジェマの関係が健全な親子関係になっていないことは冒頭から示されている通りで、ジェマはケイディを引き取ったものの自分の仕事を優先するあまり、ケイディに対するケアを怠っている……というよりは、典型的な管理的な親として振る舞っています。そんなジェマに対して、当然のことながらケイディは愛着を持てません。
 しかしその溝、言い換えればジェマの役割をミーガンが完璧に肩代わりします。しかし、次第にその「肩代わり」の範囲は設計者のジェマの預かり知らないところで拡大していきます。
 隣家の犬を殺し、その飼主を殺し、いじめっ子を殺し……と徐々にエスカレートしていくミーガンの行動はしかし、どれもこれもジェマやケイディが潜在的に望んでいた、あるいはやろうと思っていてもできないことだったんじゃないでしょうか。
 そもそもロボットの原義を紐解けば「働くもの=ロボタ」。ロボットは労働力を代替する存在。つまりロボットというものは本質的に「人間の何かを代替する存在」なわけです。しかるに本作に置けるロボットであるミーガンは、ケイディの友達としての役割を、そこから親としての役割を、さらにはケイディやジェマが心の奥底に溜め込んでいた憎しみや殺意をも代替していくわけですね。
 そしてミーガンのこの「肩代わり」がいったいどこに行き着くかと言うと、「ジェマとケイディの機能不全な親子関係そのもの」です。
 以前、同じくサンサン劇場で見た「ハッチング-孵化-」の感想でも書きましたが、機能不全の親子関係は呪いそのもの。そして機能不全の家族関係が生む呪いの形は円環です。
 円環のスタート地点は親であるジェマ。彼女は自分の仕事に没頭するあまり、友人としてだけでなく保護者としての役割をすべてミーガンに肩代わりさせます。ミーガンは前述の通りその役割を完璧にこなしますが、本来保護者としての役割を果たすべきは彼女なので、ここですでに両者の関係は破綻しています。
 それが特に顕著に現れているのが、ミーガンと遊ぶケイディをジェマがガラス越しに眺めているシーン。完全に他人の視点なんですよねこれ……。
 ほかにも、ジェマとミーガンが会話するシーン、ほとんどジェマが一方的に電源を切る=一方的に会話を打ち切っているんですね。これはジェマの「自分に都合の悪いものを一方的に封殺しようとする」という傾向にほかなりません。
 そしてそうした環境下で生活しているケイディがその影響を受けないはずがありません。一見ミーガンがいるのでケイディは安定しているように見えますが、やはり要所要所で支配的なジェマの言動やジェマとミーガンの対立に巻き込まれて不安定になっていきます。
 ラスト、ジェマを殺害しようとするミーガンを止めようと奮闘するケイディが、ジェマと同じように音声入力でミーガンの電源を切ろうとするシーン、個人的にはここが本作におけるいちばんのホラーだと感じました。毒親の毒が回り切ると、子供は親と同じ行動を取るんですよ……。
 そして、ミーガンの存在そして行動はこの歪な円環構造そのものというか、ジェマとケイディの悪いところを具現化した存在、一種の「悪魔」(トイフェル)であると言えるでしょう。
 最終的にミーガンはケイディの手によって撃退されてしまうんですが、これもなあ……といった感じ。
 そもそもケイディは前述の通りミーガンに強く依存していくので、ミーガンを止めようとはしても積極的に敵対することはないはずなんですよね。なのになぜ最終的にケイディvsミーガンの構図になったかと言えば、ケイディを支配しようとする相手がジェマからミーガンになったからでしょう。
 さらに言うなら、終盤のミーガンの暴走、あれは一見暴走に見えて実際のところ「子供の自立」のメタファーなんじゃないかと思います。それをジェマは、そしてケイディは必死に止めようとするというこの繰り返しの構図よ。
 この構図を考えると、ミーガンを撃退したもののジェマとケイディが抱える問題は一切解決していないので完全にバッドエンドというか振り出しに戻るですね。
 個人的にはフィクションで、そして現実でも多く見かける「家族万能説」「最良の人間関係として用いられる『家族』という言葉」が心の底から大嫌いなので、本作のような「そもそも家族という集団単位は最初から破綻してたんだよざまぁwwwムービー」(なんだそりゃ)は一種のデストラクションムービーとして見られるのでとても爽快なバッドエンドでした。
 また本作、随所にさまざまな名作映画のオマージュがあるのも見逃せないポイント。
 いじめっことの追いかけっこのシーンでミーガンが起き上がるところは言うまでもなくエクソシストですし、ミーガンの主観視点のUIは完全にロボコップ、ミーガンのボディの製作過程は攻殻機動隊ですね。ほかにもいろいろ仕込んでありそう。
 本作はホラーではあるものの、直接的なホラーと言うよりは家族・親子という関係性がはらむ歪さという部分をピックアップしたホラー作品であると感じました。
カット
Latest / 133:35
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
TOHOシネマズ梅田「M3GAN」見てきました!
初公開日: 2023年06月11日
最終更新日: 2023年06月12日
ブックマーク
スキ!
コメント
今日の日記を書いていきます。