あっという間にその数を減らした襲撃者の動きは早い。
火澄と南斗の2人を挟むように左右に展開し、一網打尽にされるリスクを排除した距離を取る。
先程の火澄の攻撃を受けた敵に復活の兆しはない、襲撃者達は神話生物ではなく、恐らくは魔術を修めたただの人間だ。
炎神クトゥグァを信奉する恒久の篝火の魔術師、火澄には敵の行動が手に取るようにわかる。
「Sagitta......Inflammāre......Radius......」
旧き神に捧ぐ言葉ではなく、古いラテン語の呪文詠唱。
太古から存在するこの星由来の、炎の弾丸を撃ち出すオーソドックスな攻撃魔術だ。
オーヴァードは常人を遥かに凌ぐ再生能力と個別の特殊能力を持つ人外の怪物だが、それらの異能は無制限のものではなく、もちろん万能でもない。
再生能力の限界を超えた負傷を癒やすには相応の時間と体力を必要とするし、何より邪神因子の侵食度合いによっては人の体への修復は困難を極める。
つまるところ「死ぬまで殺せば死ぬ」怪物を相手取るに至っては、形ある限り燃え続ける炎の魔術は代表的な対処法でもある。
世界へと訴えかける意志の力で姿を成した燃え盛る矢玉は、術者の敵を挟み込むように降り注ぐ。