まだまだ残ってるので少しずつ進めていきますよ。
・La Niña Pasa(すずだんご×ジャージと愉快な仲間たち)
去年の紅楼夢で大量に手に入れた、サークル「すずだんご」さんの作品のひとつ。短編小説と楽曲のセットとなっています。
作品タイトル、表紙および裏表紙の霊夢と魔理沙の格好、そして小説冒頭の「コンドル」というワードで楽曲はこれ9割がた「コンドルは飛んでいく」だろうなと思ってたら案の定で笑ってしまいました。では小説の感想から。
「霊夢と魔理沙の勝負」というのは東方二次創作においては古典的テーマの一つであり、知る限りでもこのテーマで作られた作品はそれこそ無数にあります。
ではどこでオリジナリティを発揮するかというと、「その古典的テーマにどんな要素を付随させるか」ということでしょう。本作ではそれを「コンドル」に求めています。
そもそもレイマリというカップリング、ひいては幻想郷という世界観において「飛ぶ」ということはある側面では非常に重要な意味を持ちます。本作におけるコンドルは、何者にも縛られず、大空から地上を睥睨する存在としてこの意味を仮託されていると感じました。
魔理沙から見れば何者にも縛られないように見える自由に空を飛ぶ霊夢、霊夢から見れば役目に縛られず自由に生きているように見える魔理沙。この両者のすれ違いの仲立ちとなっているのがこのコンドル、ひいては一時的に幻想郷に流れ着いた今は亡き黄金郷でしょう。
文字通り幻想郷の外にある石造都市で繰り広げられる後半のバトルは、弾幕ごっこというよりもふたりの言葉を介さない会話なんじゃないですかね。特に、「霊夢がまず初手で魔理沙の箒を折った」という行為は、単に魔理沙の機動力を奪って戦術的優位に立つという以上の意味があるのは明らかでしょう。超然としたキャラクターとして描かれている霊夢の内面が見えるようで暗黒レイマリ成分が満ちていく……。
それに対して、折れた箒にかろうじて捕まりつつ、地上絵をヒントに巨大な魔法陣を描いての反撃を敢行する魔理沙。地面がないとできない作戦なんですよね。
空中が一方的に有利でもなければ地上が一方的に不利とも限らないというこのバトルの展開は、そのまま霊夢と魔理沙のすれ違いとないものねだりで構築された関係性を表していると感じました。そして、空と地上のあいだを飛ぶコンドルという構図が雄大で美しい一編でした。
また、「『博霊の巫女』という名前と役割に縛られている霊夢」というのもまた東方二次創作における古典的テーマなわけですが、作中で魔理沙が言う、博霊の名を捨て、霊夢の名を捨てたとしてもそこに残るのは「零」と「無」だけというのは実に実に上手い解釈だと思いました。これですよ二次創作の醍醐味は。
楽曲の方の原曲である「コンドルは飛んでいく」は、むかーしむかしのそのまたむかしにNHKの「シルクロード」で覚えた思い出深い曲だったりします。そしてそこに、霊夢のテーマ曲のひとつである「春色小径」と魔理沙のテーマ曲のひとつである「オリエンタルダークフライト」が交じるのが、まさに小説本編を楽曲にしたというかたちでとても良かったです。飄々としていながらどこか寂寞としたケーナ(で合ってるんだっけ)のメロディが、すっきりした読後感の中にほろ苦さの残る本編によく合った一曲でした。
今日はここまで。