ゴツン。
ミヤジが扉の天井にぶつけた音が部屋に響いた。
「大丈夫ですか?ミヤジ先生」
フルーレは刺繍の手を止めてサイドテーブルに置くと、額を押さえてうずくまるミヤジへと駆け寄った。
「だい…大丈夫だよ、フルーレくん」
ミヤジはくぐもった声で答えるも、肩が僅かに震えていて、痛みに耐えているようだった。
「地下のワインセラーのようにクッションつけましょうか」
フルーレの申し出に、ミヤジはふるふると首を振る。恥ずかしいのか、褐色の肌色が赤く濃い。
「そんな事をしたら、扉を閉めることができなくなってしまう。私が気をつければ良いだけの事…」
「でも」
「いつもならしゃがむのだが、今日は待ちきれなくてつい本を読みながら部屋に戻って来てしまった。この痛みは行儀の悪い自分への罰さ」
ミヤジは僅かばかり膨らんだ額を撫でながら、自重気味に笑って立ち上がる。
フルーレは心配そうに眉を下げながら、ミヤジを見つめると、苦笑いを浮かべた。
「俺、ロノのところにいって氷を貰ってきます」
「済まないね、フルーレくん」