「う……」
はじめに見たのは、ぼんやりとした光。
それがなんの光か理解する前に、ぱしゅっという空気が抜けるような音がして、一気に視界がひらけた。
まるで何年も眠っていたみたいに光に目が痛む。思わず両手で目をかばって、指の間からおそるおそる自分の周りを確かめた。
ぼんやりとした光は、真っ白な天井にあるライトの光だった。視線を横にやると、右も左も白い壁。たぶん、床も真っ白だろう。
そしてわたしは……なんだろう、これは。
私は、筒のような、カプセルのような……何かよくわからない機械の中に体を横たえていた。何も着ていない裸の体。細く頼りない、女の子の体。一瞬その体が、自分のものではないようなおかしな感覚に襲われた。真っ白な自分の肌が、なんだか自分のものではないみたい。
体をなんとか起こそうとしたけれど、やっぱり自分の体ではないかのようにうまく力が入らない。
と、白い壁の一部に音もなくすうっと縦に亀裂が入った。かと思うとその亀裂が左右に開き、白い壁と同じ真っ白な服を着た女の人が入ってきた。
かつ、かつ、かつと規則的な足音を響かせながら、その女の人はわたしの目の前まで歩いてきた。
腰まである長い金髪。すらりとしたスタイル。そして、わたしをじっと覗き込む瞳は、一歩近づいてくるごとに色合いが変わって見える、不思議な色をしていた。
「遺伝子コードからの再生に成功。失見当、意識の混濁は認められず。海馬体への基礎知識の定着完了。自律呼吸確認」
わたしの目をじっと見つめたまま、女の人はよくわからないことを言った。なんだか平坦な、感情の感じられない、不思議な声だった。
あなた、だれ? と聞こうとして息を吸い込んだとたん、わたしは激しく咳き込んでしまった。何度か咳き込んだ後にようやく言葉を口にしようとしたけれど、まるで何百年も誰とも話したことがなかったかのようにかすれた声しか出てこない。
「ゆっくりと呼吸をしてください」
女の人は、また感情の感じられない平坦な声でそう言った。喉の奥からひゅうひゅうと声にならない声を漏らしながら、わたしは女の人の言う通りに、胸元を押さえながらゆっくりと息を吸って吐く動作を繰り返した。その様子を、女の人は何を言うでもなくじっと見ていた。
「は、あ……あ、なた、だれ……? ここは……?」
わたしはようやくそれだけの声を絞り出した。その声も、なんだか自分の声じゃないような気がする。というよりも……頭にもやがかかったように、自分の声がどんな声だったかもよくわからない。
女の人は、不思議な色の瞳でじっと私を見つめながら話し始めた。
「情報開示レベル・ウルトラヴァイオレット、クリア。ベータベース上のすべての情報を開示可能です」
「え……と……?」
「第1の質問に回答します。わたし、つまり[[rb:この躯体 > ・・・・]]はあなたとの円滑なコミュニケーションを図ること、および再生直後のあなたに過度の精神的ショックを与えることを避けることを目的に製造された人型端末です」
「え……え……?」
「第2の質問に回答します。ここは衛星軌道上を周回中の人類保全機構の緊急隔離ブロックです。本ブロック以外の区画はすべてカットオフ。現在、わたしは最優先目的である人類の保全のために行動しています」
女の人の言っていることは、正直わたしには半分も理解できなかった。