ゴミ箱に捨てられた赤子だ。その赤子はまもなく死のうとしている。
 街灯の光は届かない。したがって彼が見る最後の光は、都会の明かりで霞んでいるまだらな星空になるはずだ。
 彼はあなたに恋するために産まれてきた。ほんの数時間前の話だ。しかし彼の恋はあなたの手元まで届きはしない。不運にも、彼を産んだ親はろくでもない女だった。公園のトイレで彼を産んだその女は、コンビニのビニール袋に彼を包み、口を固く縛って飲食店裏の生ゴミの上に置き去りにした。
 だから傷跡のように痛ましい彼の恋があなたの元へと届けられることは、これまでもなくこれからもない。
 彼は産まれて初めて目を開く。ビニールの隙間から残酷で肌寒い暗がりの世界を覗く。その低気温な外気は、羊水にまみれた彼の体温を容赦なく奪う。
 その赤子はしかし、産まれてから一度も泣いていなかった。
 人の子は産まれた瞬間から泣き続けて、死ぬまで涙を流し続けている。
 悲しみを理解せず、快楽を享受せず、あなたは痛みを噛み締めて泣き続けている。
 その赤子は、とうとう一度も泣くことをせずに死んでしまう。
 あなたが受け取るはずだった恋心は、彼の無垢な魂とともにゴミ溜めで枯れ果てている。
 そしてあなたは、今日も一人で死へと一歩、また一歩と、歩みを止めずに泣き続けている。
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なしひと
https://youtu.be/pr6uXgkoRt0
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なしひとへのお題は『行方知れずの恋・無垢な瞳が瞬く・喉が嗄れるまで』です。
初公開日: 2022年11月08日
最終更新日: 2022年11月08日
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なしひとへのお題は『行方知れずの恋・無垢な瞳が瞬く・喉が嗄れるまで』です。
なしひとへのお題は『君のことが好きなんだ・泣けない死神・解けないように絡める指』です。
なしひとへのお題は『君のことが好きなんだ・泣けない死神・解けないように絡める指』です。
なしひと
なしひとへのお題は『この先に何もないと知っている・小さな自己主張・喉が痛むほど叫んだ』です。
なしひとへのお題は『この先に何もないと知っている・小さな自己主張・喉が痛むほど叫んだ』です。
なしひと
なしひとへのお題は『誰も知らない二人だけの秘密・ばくんと心臓が跳ねる・置き忘れた仮面』です。
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なしひと