大学を出てすぐに、頬に冷たい感触を覚えた。ウィリアムが空を見上げると雪がしんしんと降り始めていた。
「もうそんな季節か」
ついこの間まで秋の空だったというのに、いつの間にか冬の訪れが来ていたなんて、日々の忙しさから全く気付くことが出来なかったなんて。それだけ心に余裕がなかったということだろう。
自分でも呆れながら歩みを進めると、校門前に人影が見えた。もしやと思って近付くとそこには見知った人物がいた。
「ホームズさん、いらしてたんですか」
声をかけるとシャーロックが嬉しそうに「リアム!」と近寄って来た。いつもの距離感で隣に立つと、当然とばかりに腕を絡めて来た。
「じゃあ行くか」
「なんで!?」
いきなり出迎えたかと思ったら勝手に腕を組んで歩き出す。仕方なく付き合うことにして同じ速度で歩き始めた。
「ホームズさん、もしかして私を待っていたんですか」
素朴な疑問を尋ねるとシャーロックは「そうだ」とあっさり肯定した。頬が少し赤い所を見れば、長い時間待っていたのだろう。変なところが律儀だなと笑みが零れた。
「そうですか。ふふっ。ありがとうございます」
「いや別に。だってリアムに会いたかっただけだしな」
「あ、ホームズさん」
どうした?と首を傾げるシャーロックの頭に付いた雪を払ってやった。
「こんなに雪がつくくらい待っていたなんて……」
呆れた人だ。とまでは言わなかった。なぜなら彼は至って真面目にここに来ているのだから。
「待たせたお詫びにどこかでお茶でもしましょうか」
「じゃあ良い店があるんだ。行こう」
「え、どこか良いところを知ってるんですか」
「当たり前じゃん。リアムを連れて行く所をリサーチするのは当然の事だろ」
「そ、そうですか」
さっきから調子が狂う……。いきなり現れておいて、いきなり僕の心を乱して。それなのに、どうしてか……素直に嬉しかった。
「ありがとうございます。では今日これからはホームズさんにエスコートしていただけるわけですね」
と言ってやれば、シャーロックの表情がみるみるうちに赤く染まっていった。自信たっぷりだったくせに視線を逸らして、照れてしまったようだ。
「ホームズさん?」
「あ、いや……。いくか」
「ええ、そうですね」
辺りは薄暗くなり、雪はどんどん地面を白く染めていく。すっかり気温も下がり肌寒さに身震いした。するとシャーロックは、自分だってずっと外で待っていたくせに、ウィリアムに着ていたコートを羽織らせてやった。
「いいんですか。寒いでしょうに」
遠慮してコートを返そうとするが、シャーロックは「いいんだ」と言ってそのままウィリアムにコートを着せた。
「(あったかい……。)」
温かくなったのは身体だけではなく、心も。
「なぁリアム」
じんわりと温もりを感じながら俯いたウィリアムにシャーロックが声をかけた。
そしておもむろに手を差し出してくる。
「寒い……よな」
ほら、と、やや強引に手を差し出す。意図が伝わったウィリアムもシャーリーの真似をして手を差し出した。二人は手を繋いでダラム中心街を目指して歩き出す。
雪はしんしんと降り続け、冷たい風が吹いているというのに二人の体温は下がることなく、むしろ過ぎ去った夏が戻って来たかのような暑さを感じるほどだった。
「シャーリー、雪が降ってきたね」
遠い異国の地も、あの時と変わらず冬が訪れ雪が降る。この地にきて初めての雪を手のひらで受け止めながら隣を歩くシャーロックに、ウィリアムは嬉しそうに教えた。
「そうだな」
「思い出さない?あの時の帰り道を」
この雪でふと思い出した懐かしい記憶をシャーロックにも伝えれば、シャーロックはおもむろにコートを脱いで「寒いだろ」と言ってウィリアムの肩に羽織らせた。
「あったかいよ。こんなの着なくても。シャーリーと並んで歩いていれば」
「リアム……」
暮らしにも慣れてきたここニューヨークの冬の街並みをゆっくりと眺めながら二人は、一緒に暮らす住まいへと足を進めた。
この時もまた、あの瞬間の様に、まるで雪解けの季節の様にあたたかい気持ちでいっぱいになった。
おわり
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ななし@268527
きらっち早えぇぇぇ!
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初公開日: 2022年09月28日
最終更新日: 2022年09月28日
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お題を聞いて即興で書きました。
お題「雪がしんしんと降る」
シャーウィリ