そのときは、運ばれてきた檻の中でうごめく影をカーテンの隙間から覗くのが精一杯だったけど、自分の見たことない不気味な生き物が手の届くところにいるという光景と、その光景がもたらす怖さと同じだけの高揚感は、わたしの頭の中にはっきりと焼き付いていた。
 わたしが檻の中の畸形の少年から逃げなかったのは、もちろんそれだけが理由じゃない。畸形であっても、不気味な姿をしていても、目の前で今まさに死にかけているだれかを、ほうっておくことなんて出来ない。
 檻の隙間から手を伸ばし、少年の頭に触れる。髪の毛というよりは針のような、ごわごわに固まった感触。それだけで、この少年が今までどんなふうに扱われてきたかがわかった。
「待ってて。なにか……食べられるもの、持ってくるから」
 彼が、わたしの言葉を理解していたかはわからない。彼は、さっきと同じような言葉にならないうめき声を上げただけだった。
 そんな彼を残し、わたしはカンテラの光を頼りに礼拝堂の地下を出た。こんな時間に出歩いているところをお父様にでも見つかってしまったらどんな罰を与えられるか、そんな考えは頭の隅に追いやられていた。わたしの頭の中は、檻の中でうめき声を漏らすだけしかできないくらいに弱りきっている少年のことでいっぱいだった。
 こんな焦燥感に駆られたのは初めてだった。まるで、自分の体が誰かに操られているようだった。こんな時間に自室の外に出ているのはもちろんのこと、これから食堂に忍び込んで食べ物を盗み出そうとしているなんて、自分でも信じられない。
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書きかけのSSをいい加減終わらせるぞー……
初公開日: 2022年08月25日
最終更新日: 2022年08月25日
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コメント
遅れまくっている後輩への誕生日プレゼントを書いていきます……