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朝から体調は良くなくて、でも出席日数を考えるとギリギリまで出席したくて、兄がいないのをいいことに、一織は平気な顔をして寮を出てきた。
熱がある自覚があったため、朝から保健医である万理には予め伝えていた。苦笑いこそ返されたものの、一織の言いたいこともわかったのだろう。あまり強く止められはしなかった。
それでも、やはり2時間目を終えるくらいには随分と熱が上がってしまったらしい。周囲の級友に保健室に行く、と先生への伝言を託すと、ゆっくりと席を立った。
休み時間があまり長くないために、移動教室がある生徒以外は廊下におらず、教室内の喧騒が時折聞こえてきて寂しさが顔を出す。
もう少し、自分の体が丈夫であれば。
なんて、誰にも言えない独り言を身の内に閉じ込めて、朝も訪れた保健室をノックする。
「はーい」
「失礼します」
消毒液とも塩素ともいえない不思議な匂いのする部屋に、つい眉が寄る。
「一織くん。熱あがっちゃった? 辛そうだね」
「……」
自然とうつむいてしまう視界の中、見えたのは万理の靴の先だけだった。普段なら一度は椅子に座らせられて体調を確認されるのに、今日はもう早退までの休憩になるからか、初めからベッドの方へ誘導される。
「ベッド空いてるから、横になってて。今お迎え頼んでくるね」
「………………はい。すみません」
「謝ることじゃないよ。あ、熱だけ測っておいて? 左側は使ってるから、右側にお願い」
「ありがとうございます」
「今日はみんな忙しいんだね……? お迎え、ちょっと遅くなるみたい。大丈夫?」
「、大丈夫、です」
熱が高すぎるせいか、結局大人たちに体調がばれてしまったという罪悪感のせいか、全く瞼が重くならない。
万理の動く音や、隣のベッドから聞こえてくる衣擦れの音が気になって、どうにも眠気がやってこない。普段なら起こされるまで一度も起きることなく眠っていられるというのに、今日はなぜか眼が冴えて仕方ない。
しばらく真白の天井を眺めてぼんやりしていると、廊下のあたりが騒がしくなってきたのがわかる。
少し前に万理が慌てて部屋を出ていったのが関係しているのかもしれない。
「椅子の上に横になれる?」
「は、ッ、はぁ、ひあ、」
苦しそうな呼吸音がベッドの中まで響いてくる。どうやら過呼吸を起こしているらしい。一織自身がなったことはないが、一度バス内でなっている人に遭遇したことがあった。あの時は三月が介抱したおかげですぐに治まっていたが、それでも随分と苦しそうだったのは今でも覚えている。助けた三月に、死ぬかと思った、と言って涙を流していたあの子の顔は忘れられない。
大変だな、と思いつつ、自身がその呼吸に引き摺られないように呼吸を確実にする。熱のせいで浅くなりそうな呼吸をなんとかいつも通りに保とうとするものの、部屋中に響く呼吸音がどう頑張ってみても耳に入ってくる。意識していても、耳から入ってくる音にいつの間にかつられていって、早く浅い呼吸をしてしまう。
「は、ッ」
「大丈夫、ゆっくりね。落ち着いて」
万理の落ち着かせようとする声はするものの、室内に響く声の大きさは変わらない。
だめだ
これ以上ここにいれば、自分も過呼吸になってしまう。
わかっているのに、熱のせいで身動きもままならない。
万理は今辛そうな子についているのに、自分まで過呼吸を起こすわけにはいかない。
いつかの兄の言葉が頭の中でリフレインするのに、それ以上に耳から入ってくる情報の方が多くて、熱のある頭が混乱してしまう。
このままではいけない、それだけは確かで、音を遮断するように布団に潜り込む。
「っ、はぁ、はぁっ、は、」
布団の中は温かなはずなのに、体がぶるぶると訳もなく震えて、籠った息が熱くて息がし難くい。
布団の中で