20分前にあの子から【終わったから帰るよ。】と連絡が来たから、うちの家のドアがもうすぐ開く頃だろう。今日の最高気温は38度で、行く前から「暑いから大学行きたくない…。」「なんで夏休みなのにゼミの集まりがあるんだ…。」と文句を言っていたあの子のために冷蔵庫から1つの卵を取り出した。
―バタン
「ただいま~!暑い、暑すぎるよぉー…。」
そう言いながら帰ってきた彼女におかえりと返す。
「…溶けるかと思った。大丈夫?溶けてない?」
「ギリギリ大丈夫みたいだよ。」
「良かった…。ていうか甘い匂いがする。何?勘ちゃん何か作ってるの?」
ヒョイッとキッチンを覗き込んで言う彼女はうっすらと額に汗をかいていた。俺は一度手を止め冷蔵庫から水出しの麦茶を取り出し、彼女に手渡した。
「ん~…内緒。後でのお楽しみかな。」
「え~?なになに?気になるんだけど!」
「だーかーら、後でのお楽しみだってば!ほら、とりあえず水分補給してから、シャワーでも浴びてくれば?汗かいたんでしょ??」
「うん、そうだね、そうする…。流石に汗だく。本当外暑いよ、アスファルトからの照り返しがヤバかった。」
そう言って彼女はコップの麦茶を一気に飲み干してから、シャワーに向かっていった。
その後ろ姿を見送ってから、もくもくと作業を続ける。
振るっておいた薄力粉に砂糖を混ぜ合わせ、2回に分けて牛乳を入れる。それから卵も割入れてから泡立て器でぐるぐると滑らかになるまで混ぜていく。
お風呂からキュッという真鍮が擦れる音が小さくした。それからバタンという音が聞こえるのを耳にしつつ、ローテーブルにホットプレートを設置した。
「ふー、サッパリしたっ!」
「おかえり~。」
「あ~、クーラーが染み渡るぅ~…!」
フェイスタオルを片手に洗面所から出てきた彼女は、俺のもう着なくなったTシャツとハーフパンツを履いていた。俺は彼女のこの姿が結構好きだったりする。三郎なんかは部屋着は可愛いルームウェアを着ていてほしい、なんてこの前の飲み会で言ってたけれど、こうやってちょっとゆるめの俺の服で全身を包んでいる姿は、彼女が丸々全部俺のモノになったような感じがしてグッとくるものがある。
キッチンに戻った俺の後をひょこひょこと着いてきた彼女は俺の背にくっついて肩越しから手元を覗き込む。
「…勘ちゃん、あつーい。」
「あはは、なにそれ。くっついてきたのはそっちなのに文句言わないでよ。」
「だって何作ってるのか気になるんだもん。」
「暑い中頑張ったご褒美と労いのためのデザートだよ。…まぁ俺が食べたかったから、っていうのもあるけど。」
「あっ、後半が本音だなーっ!?!?」
なんて言いながら、両手が塞がってがら空きな俺の脇目掛けてくすぐりという攻撃を仕掛けてくる。…きっと前半の言葉が本音だと彼女はちゃんと分かってくれているんだろうけど、こうやって子どもみたいで無邪気な彼女はわざと軽口を言うのだ。
それにしても俺はやられたらやり返すタチだ。一旦手に持っているものを置いてから、彼女の脇腹に容赦なく攻撃を仕掛ける。するとひーひーと逃げた後「降参!」と両の目に溜まった涙をぬぐい、両手をあげた。…シャワー上がりですこし色っぽいと思ったのは心の中に秘めておく。
それからゆっくりとまた彼女が近付き「ありがとうね。」と小さく言った。
「私も何か手伝えることある?」
「ん、じゃあ食器棚の大きい白い平皿をローテーブルに持ってって。あとホットプレートあっためといて。」
「はぁい!」
スキップしそうなぐらいルンルンな彼女にクスリと笑ってから、冷蔵庫の中にいれておいたフルーツと生クリームを取り出す。
「もうそっちのテーブルに運ぶだけだから座ってていいよ」と声をかける前に、彼女はもうローテーブルに座って身体を揺らしながら全身でウキウキしている様子で思わず笑ってしまった。
手に持っていた生クリームが入っているボウルをテーブルに置くとぱちぱちと拍手をしながらいつもより高めの声を出した。
「わーったっぷり生クリーム!罪ーっ!!…あ、いちご!みかん!バナナ!わーっキウイもあるっ!!」
「何作るか分かった?」
「んー。…パンケーキ!?」
彼女は答えを出したけれど、それに正解も不正解も言わず作ってる置いた生地をホットプレートの上に広げた。その生地をお玉の底で薄く薄く広げて行く。すると彼女の大きな目が更にぱぁと明るく広がった。
「クレープだ!!」
「うん、正解~っ!」
薄い生地のふちにうっすらと焼き色が付いた所で裏返しにして数秒。ふわり、と白い平皿に乗せてあげると歓声があがった。
「最初は何スペシャル作る?」
そう聞くと彼女はむふむふ、と笑ってから俺の大好きなその笑顔とその声で楽しそうに言うのだ。
「最初は勘ちゃんの好きな苺を使って苺スペシャルにする!」
「あれ、絶対キウイだと思ったのに。」
「そりゃ私はキウイが1番好きだけど、まずは勘ちゃんスペシャル作るんだ!」
「ははっ、じゃあすぐにもう1枚生地焼くから同じやつ作ってよ。」
「ふふふ、まっかせなさーい!」
2つ目に作ってもらったクレープは、市販のよりも多く生クリームが入っていて口に入れた瞬間、甘い甘い幸せが広がった。
なんてことの無い日常だけど、笑い声が溢れていて大切な日々。こんな日常をクレープのように大事に大事に包んでいたい。
……こんな感じで小説を書いてます。これから文章の見直しやら付け足しやらの推敲をします!
以上でワンライをおわりにしまーす!!
63分でした!!ありがとうございました!