時刻は午後六時半。土方は風呂敷に荷物を詰めていた。着流し、下着、靴下、煙草にライター。忘れ物はないか、と何度も確認をする。これは万事屋へ行くための準備だ。
明日は非番で、今夜から万事屋に泊まる約束をしている。確認しては風呂敷を解いてもう一度確認を繰り返す。
「一、二…いや、三枚持って行った方がいいか?」
土方はパンツの枚数で頭を悩ませていた。毎回ではないが、泊まれば肌を重ねる。時には満足するまで互いに何度も求めるため、下着は多めにある方が安心だ。万事屋には着流しを一枚置いているだけで、下着や足袋はいつも持参している。忘れたら貸してもらえばいいだけの話なのだが、まだ恥ずかしさが勝ってしまう。
「よし」
迷った結果、下着は三枚持って行くことにした。風呂敷を手に歩き出す。「いってらっしゃい。お気をつけて」と挨拶する門番に軽く手を振り、恋人の家を目指す。
歩き続けること十数分、大きな看板が遠目に見えた。すっかり見慣れた「万事屋銀ちゃん」と書かれた看板。豪快な字に、ふっと頬が緩んだ。
外階段を上り、呼び鈴は押さず引き戸を開けた。付き合い始めたばかりの頃は毎回必ず呼び鈴を押し、家主が出るまで待ってから上がっていた。しかし、ある日銀時は言った。
『来たらすぐ入れよ。万事屋(ルビでここ)もおめェの家なんだし』
そう言われた時、胸に温かいものが広がり、思いきり抱きついたのはいい思い出だ。
以来、呼び鈴は押していない。その代わりに、引き戸を開けてこう言うのだ。
「ただいま」
挨拶をすれば、程なくして奥から足音が聞こえてくる。客間からかおをのぞかせたのは、ずっと会いたかった銀色。
「おかえり。飯できてるから手洗っておいで」
「あァ」
洗面所で手洗いうがいをする。真っ直ぐ客間へ向かい、寝室に風呂敷を置く。ソファに座れば、一気に身体の力が抜けた。
「ほい、お待たせ」
台所から戻ってきた銀時は、机上に皿を置いていく。今日のご飯は野菜たっぷりのあんかけうどん。いい匂いが鼻腔を擽る。スン、と鼻を鳴らせば、勝手に口角が上がった。
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