「個性かけたぞてめーら! 今までやられたぶん、存分に取り返せ!」
オレのかけ声を合図に、クラスのメンツが色めきたった。この機を逃さんとばかりに、全員が強力な連携攻撃でもって、いっせいに"相手"へと踊りかかる。
とっさにUSJの巨大モニターを見ると、そこには"異常なほどの不仲"で知られるプロヒーローデクと、大・爆・殺・神ダイナマイトの絶望した表情が映し出されていた。
……よし、二人には間違いなくオレの個性が掛かっている。
「やったぞ! オレたち、1Aクラスの——」
勝ちだ!
そう続くはずだったオレの言葉は、突如引き起こされた大爆発により、跡形もなく消えていった。
爆発によって発生した、多量の煙のせいで視界がきかない。唯一分かることは、そこかしこから戦闘不能にされたクラスメイトのうめき声が聞こえてくるということだけだった。
呆然としたオレは、派手な音を立てて一歩後ずさってしまった。無意識とはいえこんなマヌケな行動は、むざむざ相手に居場所を教えるようなものだろう。瞬間、オレの目の前に赤い閃光が走り、その正体を確かめる間もなく、強烈な腹パンを食らって地面に倒れ込むハメになったのだった。
……いったい何が起きた。爆発の直前までは、オレたちが圧倒的に有利だったはずだ。
「……てめェ、"個性を入れ替える"個性持ちだな?」
腹をかばいながら、なんとか声のする方に目を向ける。そこには知らない男が立っていた。
いや、よく見ると、大・爆・殺・神ダイナマイトだった。ただ、容姿が当初と大きく異なっている。彼は身体中にバチバチと赤い閃光をまとい、その髪を激しく逆立てている。
……いや、スーパーサイヤ人かよ。
「すごいやかっちゃん僕の緑と違って、個性を発動させたときの余波が赤色なんだねめちゃくちゃかっこいいや! あと全身の筋肉や血液循環といった代謝がすべて底上げされてるんだねもはや体から発せられる尋常じゃない程の熱がまるでオーラみたいに見えるすごいぞ!」
「ハッ! 語ってんじゃねーぞクソいずくがよォ!」
クラス全員が地に伏す地獄のなか、嬉々として動き回っているのは、オレが個性を入れ替えて戦闘不能になったはずのプロヒーロー二人のみであった。
これまでオレたち1Aは、"相手の個性を入れ替える"というオレの個性を軸とした連携攻撃で、雄英高校の教師相手でも負け無しだったのに。
「かっちゃん、見て! 僕もしかっちゃんの個性が使えるようになったらってずっと考えてた技があるんだ! ほら僕ってデラウェアスマッシュとかもそうだけど掌よりも指先をよく使うからかっちゃんよりも指先に力点をおいた攻撃ができるんじゃないかって!」
デクは早口でそうまくし立てると、銃の形にした右手に左手を添えて、誰もいない方に向け個性をぶっ放した。方向を絞られた大爆発は、まるでビームのように前方を焼き尽くす。
……いや、霊丸かよ。
通常、プロのヒーローほどに自分の個性に慣れきっている人間は、突然個性を他人のものに入れ替えられると、満足に個性を発動させることすら叶わないものだ。
にもかかわらずこの二人は、互いの個性を瞬時に自分のものとし、そのうえ、元の持ち主にはなかった新技まで編み出しているらしい。
「ゲホッ……あ、あんたらおかしいよ! なんなんだよ!」
悔しさのあまり、無様なかっこうで子供っぽい恨みごとを吐いてしまった。
初めてオレたちを負かしたプロヒーロー二人は、きょとんとオレを見たあと、人の悪い笑みを浮かべたのだった。