とりあえずミスタから書きたい
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「それってよぉ、オレの信条に合わないと思うんだよ」
 いや、難しい言葉を使っちまった。ただ単純にオレらしくないっつー話なんだが。ミスタがそう続けるのを私は黙って聞いている。正確には、黙って聞くしかない。手元のコーヒーを飲み終えるまで席を立つわけにはいかなかった。彼も飲み物を注文していたが、持ってきてくれた店員さんにお礼を言ったきり、手をつける様子がない。
「だからつまり」
 彼は何か言おうとしたが、すぐ傍の道を知り合いの女の子が三人通って彼の名を呼んだので、彼は気前よく返事をしていた。満面の笑顔で返事をした後ハッとして「違うからなッ!?」と叫んだ。頭を軽く押さえて大袈裟な様子で続ける。
「今のは違う。そうじゃあねーんだよ。おまえの言いたいことを、オレはわかっているつもりだ。おまえが何を気にしているかも、わかってる」
 そのはずなんだ。そのはずであるらしい。私はコーヒーを一口飲み込んで、じっとミスタを見上げる。彼は居心地が悪そうに背筋を伸ばした後、目を泳がせて、それからさっき女の子にしたように笑ってこちらに手を振った。
「ええっと、ごめん、なにが言いたいのかわからない」
「うッ」今度は両手で胸を押さえてテーブルに突っ伏して「駄目じゃねえかよお~」と文句を言っている。「あいつら適当なことを言いやがって」ミスタは今日、私が逃げられないタイミングで相席してきた。店へ入るところを見られていたに違いないし、待ち伏せされていた可能性もある。「聞いて欲しい話があるんだが」と真面目にはじまるものだからなにかと思えば、未だに、なんの話かわからない。
「大丈夫?」
「おまえにはこれが大丈夫に見えるか? 重症なんだよ、オレの手には負えねーの。だからこうして相談してるんだぜ」
「ああこれ、相談されてるの」
悠長にそう返すと、ミスタは明らかに苛立ったように眉間に皺を寄せる。テーブルを指の先で叩いてもいる。「そうだよ! 相談されてんの!」言うとようやく頼んだ飲み物に口をつけていた。
「……何を?」
「あ~~~も~~~~!」
彼らはあまり、周りからどう見られているかは気にならないようで、店に轟く大声で言った。テーブルを叩いて、ぐっと詰め寄って来る。唾が飛ぶ。
「恋、愛、相、談、だッ!」
「ああ」相談したいことがある。ジャンルは恋愛。「うん?」首を傾げるとミスタは自分の頭を掻きむしって「どうしろってんだよお~!」とまた叫んでいる。お客さんの何人かは、関わらないほうがいいかもしれないと努めてこちらに視線を向けないようにしていた。顔を覚えられたら次から来にくいな。私は最後の一口を飲み込んだ。この一杯を飲み切るまでの約束だったが、流石に今帰るのはどうだろうかと正面で暴れているミスタを見る。こうして見ている分には面白いな、と思う。
「はあ」
 彼は私と話をしている時、こういう、難しい顔をしていることが多い。挨拶もどこか硬い。それでもわざわざ声をかけて貰えるのは、彼の言う『信条』みたいなもののおかげなのだろうか。私と話をしていても、さして面白くもないだろうに。
 カップに何も残っていないのに口をつけてしまって、何事もなかったように口から離す。
「もう何を言っても格好はつかねーだろうから言うけどよ、わかってんだ。本当に。正直今だって嫌々付き合ってくれてるってことも、わかってる。嫌なら嫌でいーんだ。いつもなら『そう』なんだよ、嫌がってるのにわざわざ付き合わせるっていうのは、どうにも違うだろ?」
「あー」恋愛相談。嫌がっている相手と仲良くなりたい、という話だろうか。「ああ!」だからミスタから距離を取っている私を相談相手に選んだわけだ。「無理矢理は良くない」「だろお!? だからオレの知りてーことっつーのは」だけど。
「私は、嫌々ってほど、嫌でもない」
だから、相談相手としては適していないかもしれない。私が距離を置こうとしている理由は、嫌だからではないからだ。ミスタは私の正面の席に座った瞬間からごそごそと落ち着かず、常に何かしらの音を出していた。が、今、音がピタリと止んだ。
「えッ、嫌じゃあねーの!?」
なんだよ嫌じゃなかったのかあそれならいいんだよ、そうかそうか。嫌じゃない。嫌じゃなかったわけね。いやあよかったよかった。それなら話はカンタンだよなあ――。イメージとしては、銃が近い。強くて怖いなにかがこちらに向けられたように思えて思わず席を立った。「え」照準が合ってしまった、という感じだった。「あの、ちょっと?」ミスタの声は間が抜けているが、今のはまずい。私の手には負えない。
「ごめん」
今日のところは逃げておきたい。適当にお金を置いて店を出た。
ミスタの飲み物はまだ半分以上残っていたから、すぐには追って来ないはずだ。
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プロシュート兄貴がやばいんで…次は兄貴で…
なんっか異常なくらい顔がいいな…?
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「あーちょっと、待って」受話器を頭と肩で挟んでペンを探した。いつもは電話の傍に一本は転がっているはずだが見当たらない。誰かがどこかへ持って行ったか、台の下にでも転がってしまっているのだろうか。「ごめん、ペンが」ないからもうちょっと待ってほしい、そう言うつもりだったのだけれど、後ろからスッとボールペンを差し出されたので言う必要がなくなった。「大丈夫。お願い」言われた言葉を書きつければ用事は終わりだ。受話器を置いて振り返る。「ありがとう。プロシュート」私にボールペンを渡してから、彼は後ろの柱に身体を預けて煙草を吸っていた。悠々と煙を吐き出しながらニヤリと笑う。「気にするなよ。仲間だろう?」ものすごく怖いことを言われている気がして目を逸らす。数日前にハンカチを借りたこともあった。「えーっと、なにかお礼いる?」「おいおい、気にするなって言ってるだろ? それともなにか? おまえにはオレがペンを一本貸したくらいで恩着せがましくする男に見えるってのか?」「そんなことは」ただ少し、彼への恩が溜まり気味に思えて不安になってきただけだ。私の心を見透かしたようにプロシュートは笑う。「まあ、他ならぬおまえがどうしてもと言うんなら、今、欲しいものを教えてやるが」煙草を私から遠ざけて、反対の手で私の髪をさらりと耳にかけた。「どうする?」
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終わり!
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67:22
アサリ
はーーーとありがとうございます!
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向き
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二本書く
初公開日: 2022年04月06日
最終更新日: 2022年04月06日
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