2月14日。毎年この日はどうも好きになれなかった。理由の一つが自分にとって果てしなく縁の無い日であること。もう一つの理由は、体育館前に屯している女子たちがいつにも増して──
「うるせえ……」
練習終わりのこの時間、体育館の一角を占拠している人だかりを見て、木崎は憎たらしげに呟いた。『高谷煉FC』の弾幕を提げている女子たちに囲まれていても、中心にいるソイツは持ち前の高身長で顔が隠れることはない。一人一人から可愛らしくラッピングされたプレゼントを受け取り、飄々とした笑顔でありがと、と言っている表情まで丸見えだった。
「高谷のやつ、大人気だな」
部員の誰かがそう言ったのを聞きながら、木崎はもう一度ため息をつく。高谷が女子に囲まれているのは常のこととしても、今日は一段と騒がしい。普段は練習が終わればすぐに撤収する『高谷煉FC』だが、この日は片付けが始まっても解散する様子を見せなかった。高谷が片付けに参加していないのはもちろんのこと、体育館内で固まっているせいで清掃ができない。
周りの部員たちも関わりたくないのか遠巻きに見ている中、木崎は意を決して女子たちの人だかりへと近づいて行った。
「悪いけど、練習終わったから」
帰った帰った、と手を振りながら追い出す仕草をすれば、名残惜しげながらも聞き分けのいい女子たちは次第に解散していった。流れに釣られて一緒に帰ろうとした中心にいた男を、木崎は持っていたモップで小突く。
「いたっ」
「お前は片付け手伝え、バカ」
そう言ってまた片付けに戻ろうとする背中を、高谷は呼び止めた。
「あっ、木崎さん」
は、と振り向いた木崎の頬に押し当てられたのは、何か硬い感触。数秒遅れて、それがラッピングされた箱だと気付く。
「は? 何だよコレ」
「え、木崎さん今日が何の日か知ってますよね」
それくらい知ってる、そう言いかけた言葉は、高谷の続く一言によって遮られた。
「オレからの、本命チョコ♡」
高谷はそれだけ言うと無理やり箱を押しつけて、足早に体育館を出ていった。取り残されたのは唖然としている木崎と、いつの間にかこちらを注視しながら静まり返っている部員達のみ。
数秒後、木崎の大声が体育館内に響き渡った。
***
帰り道にて
「栄ちゃん、栄ちゃんっ」
「うわっ、何だよお前……っていうか今日片付け当番じゃ」
「木崎さんに、チョコ、渡せたっ」
「あー……おめでとう?」
「うん……うん」
「ちょ、泣くなよ……」
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両片思いきざたかのバレンタイン【きざたか】
初公開日: 2022年02月19日
最終更新日: 2022年02月19日
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高谷が木崎さんに本命チョコを渡す話
高谷→木崎