・Part1「Recllection」
 「再収集」。
 その前提となるのは散逸である。
「……はい、おつかれさま。今回も異常はないようね」
 回収した質問用紙やカルテらしき書類を手品みたいな早さでめくり、竹林のお屋敷で診療所を開いている医師、八意永琳はそう告げた。
「ねえ先生、人間の健康診断じゃあるまいし、ほんとに半年に1回もこんな検査やる必要があるの?」
 私がそうこぼすと、八意先生はずいっと顔を近づけてきた。あっ顔がいい……いい匂いがする……じゃなくて!
「もーばんきちゃんったら。何かあってからじゃ遅いのよ?」
「あーもう近い近い近い!!」
 慌てて首だけを体から分離させて緊急避難する。っていうかなんで「ばんきちゃん」呼びが浸透してるの!?
「特にあなたの場合、ろくろ首っていう妖怪の根本に関わる部分の話ですからね。ケガや風邪なんかとはわけが違うのよ」
「ろくろ首の根本、ねえ……。自我同一性、だったっけ?」
「よく覚えてたわね。そう、もう何回か説明したことだけど。いい機会だからもう1回おさらいしておきましょうか」
 八意先生は、私がなにか言う前にすっかり説明モードに入ってしまった。こうなると止まらないんだよなこの人……。
 うーん……この人といい影狼といい、なんでこう私の周りには押しが強い人が集まってくるのか。
 そんな私の困惑をよそに、八意先生は説明を続ける。
「人間にも言えることだけど、多種多様な生態や能力を持っている妖怪は特に、それぞれの種族に特有の、いわば『職業病』とも言えるような疾患を持っていることがあるのね。人間に比べて精神面の比重が大きい妖怪によっては、特に精神面に影響する事柄は病気どころか致命的な機能不全に直結するの」
 そのへんは私にもわかる気がする。
 幻想郷に妖怪は数あれど、私は特に人里……人間社会に近い場所どころか、人間社会の中に混じって、正体は隠しているとはいえ人間と直接接触を持って生活している数少ない妖怪だ。
 だからこそ、人間と妖怪である自分とのいろんな違いを肌で感じる機会が多い。
 
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2022年紅楼夢新刊「クビナシリザレクション」原稿を書いていきます。
初公開日: 2022年01月05日
最終更新日: 2022年01月06日
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2022年の紅楼夢の新刊予定となる「クビナシリザレクション」の下書きを書いていきます。