試しテキストライブです🌟何かあればチャットお願いします。
良い兄さんの日、とりあえず思いついたのが一個あるので書いてみます。よりみちじゃないの……申し訳ありません😨
「よりいちは物知りじゃのう」
母が亡くなり、兄の地位を脅かさないように家を出た。
一昼夜走り続けた先で知り合った女の子、うたがにこにこと笑っている。
いった言葉の意味が理解できず、首を傾げた。
我ながら表情がないが、うたはなぜか縁壱の言いたいことを読み取ってくれる。
「わしのおっかぁのおっかぁは、昔お姫様じゃったらしい。そのときにいろいろ持ってきたらしいんじゃが意味が分からんものが多くてのう。村の人もああやって広い道を作ってくれたり、田んぼを見てくれたりはあったんじゃけど使い方がさっぱりでの。手放そうとしたところにちょうどよりいちが教えてくれたんじゃ」
畑の肥やしにもならんし売ろうにもこんな有様じゃから火にくべるか迷って居ったんじゃ、と元は漆塗りだった膳を乗せる台を指さした。
粟や稗などの雑穀で炊いた赤米。かろうじて汁物と呼べる湯で伸ばしたと糠で作った味噌の椀に浮かんだ野草の菜っ葉。
非常に質素だがうたにとっては普通らしい。もぐもぐとよく噛んでから飲み込んだ。
「箸の使い方も綺麗じゃし、どっかいいところの出じゃろ?大丈夫なんか?」
問いかけに無言でうなずく。忌み子である縁壱があれ以上家にいれば、兄がどうなっていたか想像に難くない。
幸いにもうたはそれ以上突っ込まないでくれた。ありがたい。
「教えてくれたのは誰なんじゃ?よりいちのおっとぅか?おっかぁか?」
「兄上が、おしえてくれた」
「よりいちのにぃちゃんか?」
「ああ」
『縁壱、お前の分の膳だ。にいさんは腹が一杯だからこちらも食べるといい』
『巌勝様、お父上がお怒りになられます』
『父上は今日は戻らぬ。たまには良いであろう。責は私にある』
『しかし……』
『お前に責はいかせぬ。わかったら下がれ。二度は言わぬ』
『……かしこまりました』
『さ、縁壱。待たせてすまぬな。まず箸はこう持つのだ』
『右手に箸、左手に椀を、食べるときは掬うように、そう、上手だぞ』
『これは姫飯。今日の魚は川からとった鮎。汁は味噌。漬物は梅干しだな。酸っぱいから少しずつ食べるのだぞ』
『こちらも食べてよいぞ。兄さんはお腹いっぱいなのだ。たくさん食べるといい』
「……全部、兄上が教えてくれたのだ」
「ほー、良いにぃちゃんだったんじゃのう」
「ああ」
「よりいちにとって自慢のにぃちゃんじゃな!」
「ああ。……ああ、自慢の兄上だ」
無意識に唇が弧を描くのを見て、無邪気にうたが笑った。
兄を思うとき、胸元にしまい込んだ笛がじんわりと温まっているような気がする。
大丈夫だ。兄はいつでも縁壱と共にいてくれる。
きゅ、と握りしめた細長い感触が何よりも心強かった。