『そうだ、今日も古代呪文語教えて、ください』
『はぁ? 自分で理解できんだろ。もう寝る』
いつもの様に軽くあしらう。
そう、いつもこんな感じに適当な扱いしかしてこなかった。
なのに、何故と目を瞑りながら考えていた。
『あ、先輩。僕その本読みたい、です』
『……はァ?』
寝返りを打とうと思ったその時だった。
突然、キラキラとした雲のような何かが視界を占める。
あぁ、この草食動物の髪の毛かと理解するには時間は掛からなかった。
それにしても、それにしてもだ。
『お前……』
『ね、ねぇ……読ませてよ……』
『距離感がおかしいだろうが!』
イデアの毛先は頬に当たりそうな距離。
イデアの腕は丁度顔の横。
他人が見たら誤解を招くのは避けられないだろう。
『そ、そう、なの?』
いつもは……いや、他人と関わる時は伏せられている瞳に、困惑の色が灯る。
『あ……あの……も、もう近付かないから! ゆ、ゆゆ、許して……』
そう言った後、恐ろしく早い逃げ足でどこかへ消えてしまった。
数日後のことだった。
かなり心配をした様子で、オルトがレオナを探しに来た。
『あ、レオナ・キングスカラーさんで合ってる?』
『……いや』
『質問の答えになっていません』
『チッ……あぁ、そうだ』
何か面倒な予感がる。
レオナの第六感はよく当たる方であった。
イデアは目立つが、オルトも負けず劣らずよく目立つ。
機会の体、姉と同じ燃える髪の毛、そして、幼い顔立ちにこの学園には数少ない人懐っこい性格を持った者だった。
『姉さん、最近ずっと元気が無くて』
『それと私とは関係があるのか?』