リク元
メティアさんが食べたいお菓子があるけど名前が思い出せないAMFMちゃん
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刃は、キラリ、光を反射する。
フーリンの握る刀は、それはそれは綺麗に、光の残滓を散らして瞬いた。
パッと現れたあつやきが、刃の通り過ぎた後を縫うように身体を滑らせる。ひねり出されるのは、鋭い回し蹴りだ。直撃。ぐあ、と短い声をあげて吹っ飛んだ魔物に、追い打ちをかけるのはみちポンの放った一本の魔法の矢。真っ直ぐに心臓を貫く。
は、と息を吐き出し、悲鳴もなく倒れる魔物。
そちらに見向きもせず、次の敵へと向かおうとして――三人は目を見開いた。
そこにいたのは、ぼーっと突っ立っている仲間。
「メティア!」
金髪を揺らして、あつやきが叫ぶ。フーリンとみちポンが駆け出す。
呼ばれたメティアは――
「え?」
一言間抜けな音を発して、そして目の前に迫る魔物の鋭い爪を視認した。
あ、死んだかもしれない。そういえばお腹空いてるな。最期にお菓子でも食べたかったな。そんなことを暢気に考えて、メティアは間に合わないと知りながらも手の中の細剣を持ち上げようとし――
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怪我で済んだのは奇跡に近い。それは、四人の共通見解だった。
あの後、偶然、敵の攻撃がずれ、メティアは腕に軽傷を負うだけで済んだ。
しかし、メティアを囲む三人は、固い表情だ。中央のメティアは地面に正座しているので、すっかり怒られる用意ができていると考えてよいだろう。
「なに油断してたんだ」
みちポンの言葉に、あつやきも続く。
「一歩間違えれば危なかったんだってわかってる?」
「はい……」
しょぼん、と小さい身体をさらに小さくする銀髪のララフェルに、フーリンは少し同情してしまう。彼はそっとしゃがむと、メティアに微笑みかけた。
「まあ、無事でよかったよ、ね!」
「結果的にはな!」
「奇跡的にだね!」
上から降ってくるみちポンとあつやきの声に、メティアは気まずそうに身じろぎする。
みちポンは青い尻尾を揺らすと、はあ、と息を一つ吐いて地面に座り、メティアに訊いた。
「何をぼーっとしてたんだ?」
メティアは顔を上げて答える。
「お菓子――食べたいなって考えてた」
嘘は言っていない。確かに彼女はあの瞬間、お菓子のことを想った。
「お、お菓子ぃ?」
あつやきが勢いよくしゃがむとメティアの肩をつかんで揺らした。
「あんた、お菓子のせいで死ぬとこだったってのかい! そんな間抜けなことある!? もー、しっかりしてくれ!」
「まあまあ……。この仕事が終わったら食べようよ。どんなお菓子が食べたいの? メティアさんの好きな金平糖かな?」
宥めながらフーリンが訊けば、彼女は小さな口を開き――閉じた。そして首を傾げる。
「ん?」
突如訪れた沈黙に、あつやきも手を離す。三人が見守る中、メティアは困ったように眉を下げた。
「なんて名前だっけ……」
「ええええ……」
三人の声が揃う。
こうして、謎のお菓子をあてるゲームが急遽はじまった。
まず質問したのは、あつやきだった。
「どんな味がする?」
メティアはふむ、と一つ悩んでから答える。
「あったかくて、冷たい」
「反対言葉か?」
「甘くて、酸っぱい」
「情報ゼロなんだが?」
「あ、ちょっとチーズ感」
「本当にそれはお菓子かい? 無理、わからない、バトンタッチ」
次に質問したのは、フーリンだった。
「形状は?」
「ドーナツ型してた」
「それはドーナツじゃない?」
「じゃない」
「え、もう一個質問いいかな。材料は?」
「わかると思う?」
「あ、うん、そうだよね……食べるの専門だよね……ごめん……」
見かねて質問したのは、みちポンだった。
「名前の印象は? 何かこれっぽい、とか覚えてないか?」
「パパイヤみたいな始まりで……」
「南国系か……?」
「ガンゴッシュ的な終わり……」
「レジスタンスウェポン……うっ頭がっ!」
「みちポンさん、しっかり!」
フーリンがみちポンの肩をナチュラルに抱いているのを見ながら、あつやきが言った。
「というか、フーリンが持っているレシピ帳をみんなで見てみればいいんじゃ? 持ってるよね?」
「なるほど!」
慌ててフーリンが持っていた荷物を漁り、中から一冊の手帳を取り出す。四人は手帳を覗き込み、1ページ1ページ見ていき――そして、あるページでフーリンの手が止まった。
「ああ~!」
四人の声が揃った。
「「「「パパナッシュ!」」」」
フーリンが嬉しそうに言う。
「これなら、今つくれるよ! 材料持ってる」
「なんでだよ。なんでお菓子の材料揃ってんだ。どうなってんだその鞄の中」
「秘密~」
みちポンのツッコミに、唇に指をあてて答えながら、フーリンは緑の目を細めて笑った。
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「そういえば、ご飯食べてなかったし、確かに腹は減ったよ」
「戦い詰めだったからなあ」
遠くであつやきとみちポンが会話しているのを聞きながら、フーリンはフライパンを動かす。すぐ隣にはメティアが座っていて、作業を見守っていた。
フーリンはしばらく黙って手を動かし続けていたが、やがてふと気が付いたように動きを止め――まるで秘密話をするように、そっと訊いた。
「ところで、メティアさん」
「ん?」
「本当は、何を考えていたの?」
メティアは桃色の目を見開いた。そして、ふい、と顔を逸らす。
「別に」
「言いたくないなら、いいんだけれどね」
「……」
メティアは沈黙で答える。
再び手を動かし始めたフーリンの作業の音だけが響く。
しばらくして、ぼそり、とメティアは言葉を零した。
「……三人の連携が……」
「うん」
「三人の連携攻撃、綺麗だったから。私、いらない子だなって」
「え、そんなこと……!」
ない、と続けようとした言葉は、メティアの次の一言で遮られる。
「手を抜いてもいいかなって」
「え」
「三人がめっちゃ強いなら、私ちょっと手を抜いてもバレないかなって……お腹空いてたし……」
「……メティアさん」
「はい」
「メティアさんは、今日のパパナッシュ、没収です!」
「えーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「えーじゃありません!当然です!反省してください!」
「うわーん!」
遠くで二人のやり取りに耳を澄ませていたみちポンとあつやきは、顔を見合わせて、やれやれと苦笑したのだった。
おわり