こんにちは、重カ(じゅうりょく)です。久しぶりに企画に参加してみたいと思います。
完結できるように頑張ります!!!
設定内容
・現実世界
・主人公は、5歳から9歳
・初めての海
・大人に連れられてはじめて海を見るところ、または少し前からの書き出しで
・天気は快晴
作者が港町に住んでいますので、『初めての海』というのは中々難しいですね(いまさら)
取り合えず書いてみます。【追加・詳細設定】
・主人公は男の子(5歳)
・ごく普通の生活
・大人しめの性格。だが年相応に生意気だし、正直。
ただ今、主人公の年齢に迷っています。海に対する事前知識があった方が、【海】への感動が膨らむのでしょうか? それとも、テレビやネットの間接的な知識がない方が、視野が広がる、という意味で良くなるでしょうか……? うーーーん。
事前知識の描写が難しそうなので、「世界すげーーーー」の方向で行こうと思います。
快晴の天気、ということで話が爽やかになりそうなのですが、
中の人は暗い話が好きなためどうなる事やら……。
ここから書いていこうと思います。縦書き表示推奨。
【本文】
誰かが、ツンと鼻をくすぐった。僕の鼻をくすぐった。こしょこしょ撫でて、僕の目にふーっと息を吹きかけた。僕が目をゴシゴシこすると、お母さんが言った。
「だめだめ、目をこするんじゃない、目え悪くなるよ」
僕がお母さんに「なんで」と聞くと、お母さんは小さく息を吸い、大きなため息をついてから「なんででも」と困った眉で言って、ハンカチを差し出した。これで目を押さえなさいと、添えて言った。僕はお母さんの黄色いハンカチを目に当てた。香水の匂いが僕の鼻に突撃してきて、僕はむせかえる。
「ゆうき、窓を見てごらん」
運転席のお父さんが、そんなことはお構いなしに言った。僕がハンカチから顔を上げると、開いた窓へ肘を置き、サングラスを外したお父さんが、にやにやと外を見ていた。
「片手運転は止めてよ、子供と妻が乗っているんだから」
「はいはい、すみませんっと」
お父さんはサングラスをかけて、でも右手は窓の外を指さしていた。お父さんの髪が風になびくと、誰かが僕を、またくすぐった。「ほら、塩のいい香り!」お父さんが、とてもうれしそうに言う。お父さんはお母さんにもう一度、怒られていた。
お母さんは後ろの窓を開けて、お父さんの代わりに指をさす。「ほら、ゆうき。海が見えるでしょ?」
家と木の隙間から、キラキラ光るものが見えた。奥が深い青。手前が薄い水色。エンジン音とは別に、何かが擦れるような音もあった。僕の鼻をくすぐっていたのは、海のようだった。
「海?」
「浦島太郎とか、幼稚園で読み聞かせしてもらわなかった? 砂浜で、亀がいじめられている話」
「海には竜宮城があるんだぞ」
「そうなんだ」
「あると思ったらあるかもね」
海の横で、赤信号にひっかかった。波の音と、砂浜の人の声が、海の水面みたいにキラキラしていて、ツンとした香りが僕の気持ちを波のように押し上げた。
「海、行きたい」
僕は言った。映画館へ行くのは楽しみだったけど、大きな恐竜が戦うのより楽しそうな気がした。
「お、いいな。行くかあ?」
「いやよ。また今度、水着を持って来たらいいじゃない。映画に間に合わない」
「厳しいなあ。ちょっと見に行くだけだって」
お母さんは大きく息を吸って、小さくため息を吐いた。「見に行くだけね?」
お父さんは、お母さんがため息を吐くより先に、右折のウィンカーを出していた。
海の水は冷たかった。膝の上までまくり上げたズボンの裾に、炭酸みたいな泡の付いた波がぶつかっていた。僕は海を手の平いっぱいに抄った。そのまま手を放して、海に戻した。お風呂みたいに丸い水の波が出来て、広がったけど、海の奥から来る波に、すぐに食べられてしまう。すねに海が当たる。跳ね返って、次から来る波に押されて、僕のすねにまたまた当たる。
そのまま立っていると、足の甲に砂が積もった。ふざけてお父さんに「僕、砂にうもっちゃった」と伝えると、お父さんはとびきりの笑顔で「そりゃ大変だ! すぐ助けないとな」と、僕を肩に抱え上げた。お父さんのシャツはビショビショになったし、僕のズボンは太ももまで水が伝って模様が出来た。お母さんに怒られたし、映画館にも行けなくなってしまったけど、とっても楽しかった。
日差しが眩しくて、目に入った塩がびっくりするほど痛くて。間違って飲んでしまった海を慌てて吐き出したり、お父さんをマネして作った砂のお城はちっとも上手くいかなかったけど。
とっても、とっても楽しかった。
へとへとになって、お父さんとお母さんが嬉しそうに顔を見合わせて「帰ろっか」と言うまで。僕はひたすら海と遊んだ。
「今度は水着を持ってこようね」
お母さんが海の家で買ったタオルで僕を拭きながら、言った。「うん」僕は、海を見ながら言った。海はもう僕をくすぐらなくなっていて、僕は海に、そっとバイバイした。「僕をくすぐってくれてありがとう」小さく言った。
僕の初めての海だった。