ナホ! おい、ナーホってば!!
何よ!!
勝手に先に行くなっつーの!!
わぁっ!? ちょっ、引っ張らないでよっ! 危ないじゃないっ!!
……はぁ。ったくよぉ……お前なぁ、勝手に奥に行って迷子になったらどうすんだよ!
そんなこと無いわよ!! だって、ここまでずっと一本道だったじゃん! だってほら……このとお……り……。
ん? ……おーい、ナホさーん? どうしたんだよ?
ねぇ……ヤス…………私……本当に、真っ直ぐここに……来たん……だよ……ね…………?
はぁ? 何言ってんだ、お前。当たり前だろ?
……そう……だよね……。
何だぁ? 寝ぼけてんのか、お前? もしもーし? ナホさーん、聞こえてますかー?
煩いわね!! 起きてるわよっっ!!
……でも……だったらさぁ……
……何で……何で、後ろに何も無いの……かなぁ?
は?
だって……ほら……………後ろ……何も見え無い……よ……?
……な、何言ってんだよ! 馬鹿な事言うなって!
だって、今日、月出てるんだよ? 窓から光が入って来てるのに、こんなに暗いなんておかしいじゃない!! アンタも振り返って確かめて見てみてよ!! 何でこんなに真っ暗なの!? 訳分かんない!!
ナホさん。
きゃああああああああああっっっっ!!
…………はぁ……はぁ……。
……………………ナホ……ちゃん?
ゆ……ゆうこ……ちゃぁぁん………。
え……えっと……。
……まぁ…………どんまい……。
お、驚かせて、ごめんなさい。
シュウゴ……くん……? ……ご……ごめん……。
いえ。僕の方こそすいませんでした。何て言うか……その……僕たちは、確かに真っ直ぐここに歩いてきましたよ……って、それを伝えたくて……その……。
あー、いいの。いいの。あんま気にすんなよ。ってか、ナホ! お前も突然叫び声あげんな! みんな吃驚すんだろうがっっ!!
……だぁってぇ…………。
しょうがないですよ、ヤスさん。あの状況だと、誰でも叫び声を上げてしまうと思いますので。
……ごめんね……ごめんね、シュウゴくん……。
大丈夫です。気にしないでくださいね、ナホさん。
……うん。
後、さっきの話ですが、僕たちは入り口からここまで真っ直ぐ歩いて来ています。これは間違いありません。
じゃ……じゃあ、なんで……。……何で……こんなに暗いの……?
うーん……その辺りは僕には分からないですが、彼処、見えますか?
え? 何処?
えっと。あの辺りです。ほら……向かって左側に壁があるでしょう?
……うーん……待って……えーっと……あっ! うん。あるね、確かに。
あの壁、結構長さがあるみたいなんですよ。エントランスから真っ直ぐここに来るまでに、長い壁があるので窓のあるこの場所までは少し距離がるみたいなんです。
……そう……なの……?
はい。なので、壁のある所だけどうしても外からの光が入ってこないんですよね。
……あ。そうか。そうだよね。窓が無かったら、外からの光なんて入ってこないもんね、普通。
はい。
多分ですけど、さっきも言った通りここに来るまで窓がないエリアが在るみたいなので、そのせいで向こう側が見えにくくなっているんだと思います。あと、コレも向こう側が見えにくくなる原因の一つかなと。
懐中電灯?
はい。
懐中電灯が何で向こう側が見えにくくなる原因ってことになるんだよ?
簡単ですよ。同じ暗さが広がっている状態だと見えやすいものでも、こうやって光を当ててしまうと明暗の差は大きくなります。暗いものよりは明るいものを見てしまうのは当たり前だと思うので、その差が大きければ大きいほど、暗くなってしまったものは見えにくいと感じてしまう。そう言うことです。
うーん……まぁ、何となく言いたいことは分かった。
……確かに、月明かりで見ると暗い所にあるものもぼんやり見える事が有るけど、ライトを通すとそこだけ切り取られてハッキリ見えちゃうから、その他は見えにくくなっちゃうっていうのは、私も何となくそう思う。
言われてみれば、そう……だよね……。
うん。だって、こうやって懐中電灯を消しちゃうと……。
きゃあっ!! ちょっ、ユウコちゃん! いきなり電気消さないでよぉっ!!
アハハッ! ゴメンゴメン。でも、今こうやって電気を消しちゃうと、さっきよりも周りは見えにくくなっちゃうでしょ?
……うん……確かに……。
でもさ、暫くこの暗さに慣れてくると、私がここに居るっていうのは分かるようになるよね?
暗さに慣れなくても分かるよぉ! だって、ユウコちゃんの腕掴んでるもの!!
そうだけどさ。ってか、ゴメンってば、ナホちゃん。
でもさ、こんな風に光の強さによって見える範囲って変わってくるんだと思う。あっ。ライト点けるね。
お願いシマス……。……って、わっ!眩しいっ!!
シュウゴくんが言いたいことはそう言うことだよね?
はい。その通りです。僕たちはさっきから、光が当たる所ばかりを見て移動していますよね? つまり、無意識に光を追ってしまっていると言うことです。だから余計に闇に対して敏感になってしまっている、と。何となくですけど、そう思いました。
うんうん。まぁ、もっと簡単にいってしまえばナホ。
な、何よ……。
お前が一人で騒いで周りを吃驚させる、とっても迷惑な女になってるってことだぞ!
うわーっ! ひっどーい!! 何よーそれ。何かアンタ今日、私にすっごい冷たくない? ねぇ!
ハハハッ! いつも通りじゃねぇか!
うーわぁっ。むっかつくぅー!! ……って、何?
いや。少しは緊張が解けたか?
え?
やっと、いつもの調子に戻ったなって思ってよ。
……う、うん。
みんなに礼言えよな。
……あ、ありが……と……。あと、ごめんなさい! 一人で暴走しちゃって、ほんっとゴメン!!
あっ。いいよ。いいよ。私は大丈夫だから!
僕の方こそ、突然肩を叩いて驚かせてしまって、本当にすいませんでした。
てーっかよ、ナホぉ。
何? 未だ何かあるの?
アレアレ。
え? カメラ?
お前の取り乱してる恥ずかしい姿、アレにバッチリ映っちまってっからな?
なっ!?
それにライブ配信もしてっから、声もぜーんぶ丸聞こえだぜ?
あんっった、ねぇええええっっっ!!
ほんっ………と……もう、さいっっていっっ!!
いっ…………てぇえええっっ!! 何しやがんだ!! このクソアマ!!
うっさいわね! ハゲッ!!
ハゲだと!? おまっ、どこを見て言ってんだよ!! 俺の頭はハゲてねぇっつーの!!
煩いこの、バカバカバカバカッッッ!!
いてっ、いててっ!! ちょっ、おまっ、やめっ!?
…………えっと……。
……あの……これ……どうしたら………。
……え? 放って置いて良いんですか? …………え? ……あ、ハイ。分かりました。
取りあえず、僕たちはここでこのやりとりが終わるまで待っていた方が良さそうですね。
そう……みたい……だね。うん。
………………………………。
……はぁ……はぁ……。
……はぁ……ったく……。
……何よ。
……一人で勝手に暴走したくせに、人に八つ当たりするとか……お前、マジ、なんなん?
……アンタが先に吹っかけて来たんでしょ? やーなかんじぃー。
そっくりそのまま返すぜ。
げぇーっ。さいあくぅー。
と、取りあえず、終わりましたか?
あ? ああ。スマンスマン。で、どうする?次は何処に行けばいいと思う?
えーっと……今残ってる噂って何があったっけ?
受付から聞こえる声は確認が終わったから、残っているのは『徘徊する老婆の霊』と『オペ室の幽霊』。『屋上から飛び降りる霊』に『病室に現れる霊』に『霊安室の前の女』。最後は『カルテを持ち出そうとするとついてくるもの』かな?
ふむふむ。ってことはあと七つか。
そうですね。
ってかここ一階かぁ。えーっと……この先は……内科? いや。外科か? の診察室が続いてるみたいだな。
ここから近いのは何処だろう?
うーん……ちょっと施設がどんな感じで繋がっているのか分からないから何とも言えないよね。
あっ。ここからなら、多分西棟に向かう渡り廊下が近いはずですよ。
え?
あっ。僕、一度此処来たことあるんで。
あっ。そうか。そう言えばそんなこと言ってたな。……えーっと、西棟の渡り廊下が近い……ってことは、次は『病室に現れる霊』か『飛び降りる霊』の噂が確認出来そうだな。
そうですね。病室の霊が三階で飛び降りる霊が四階ですから、順番に確認していけば良いと思います。
ふむ。じゃあ、どっちから行く?
え?
いやぁ。上から順に確認していくか、下から確認していくかって話だよ。
えー……どっちから……うーん……。
効率がいいのは、上から順に。ですかね?
ほう。それは何故?
えーっと……確か、他の噂なんですけど、手術室って二階にあったんじゃなかったかな? 霊安室は地下なので、一番遠いのが四階になるはずです。
ふむふむ。
あと、徘徊する幽霊はどこに居るのかが分からないので、こっちは現時点で選択肢から外しておいた方がいいかも知れません。
確かに。
となると、四階からワンフロアずつ下りてきて霊安室で折り返して帰る。が最短ルートになるかなと。
あー。言われてみれば、確かに、そっちの方が効率良さそうだなぁ。
じゃあ、次は四階に向かうって感じ?
他に異論がなければ、そうするかなって思うんだが……どうだ?
私はさんせーい!
私も問題ありません。
僕もその方が効率がいいと思います。
……お前は? ………………うんうん。じゃあ、そのルートで攻略していく事にするか。あっ。で、シュウゴくん。
はい。
悪いんだけどさ、一回此処に来てるって事に甘えてもいいか?
と、言いますと?
何か、思った以上にこの病院、広さがあんじゃん?
まぁ、総合病院ですからね。科目が多いのでそれだけ部屋数もありますし。
……言いにくいんだけどよ。このまま何となくで進んだらナホの奴がまた、勝手にどっかに突っ走りそうでさぁ。
……あー……。
コレだけ広いと、はぐれた時、探すのが大変そうだなってちょっと心配でよ。
それは、確かに。そうですね。
そんな感じだから、取りあえず。な。
分かりました。そう言うことなら案内します。
悪いな。助かるわ。
…………何? 何の話してんの?
……あー……いや。別に。
何よぉ。変な話ぃ?
いや。そんなんじゃねぇよ。
やーだぁ。隠し事しちゃって、逆にあやしーい。
ウルセェウルセェ。んなことより、行くぞ!
あっ! 待ってよー!!
じゃあ、次は四階ですね。こっちです。
ほーい。サクサク移動しようぜ〜、サクサクよぉ。
ちょっ、だから置いていくなっつーの!!