背中が灼けるように熱い。
こんな感覚は初めてで、あたしはただ目を見開き、水を求める魚みたいに唇をわななかせることしか出来なかった。
「ヒルダさん!」
敵を魔道で迎え撃ったマリアンヌちゃんが、足を縺れさせてあたしに駆け寄ってくる。
良かった。マリアンヌちゃんが無事で。今にも涙が零れ落ちそうな、薄く膜の張るひとみを見ながら、あたしは安堵した。肩の荷が下りたといってもいいくらいだ。事実、マリアンヌちゃんに矢を向ける射手に気づいたとき、あたしは生きた心地がしなかった。
自己犠牲なんて柄じゃない。疲れることも痛いことも御免だ。けれど、知らず知らずのうちに体は動き始めていた。あたしは兎に角、理屈とか損得勘定だとか、そういったものを全てかなぐり捨てて、走った。走って、マリアンヌちゃんを押し倒すように伏せったのだ。結果はまあ、この通りなのだけど。
あーあ、馬鹿みたい。
あたしに追い縋って泣くマリアンヌちゃんを横目に、ひとり自嘲する。
あたしはマリアンヌちゃんの笑顔が好きなのに、何故こうなるのだろう。最期くらい、もっと可愛いマリアンヌちゃんが見たかった。こんなの、我儘のうちにも入らないだろうに。
仰ぎ見るマリアンヌちゃんは泣き腫らし、憔悴しきった酷い顔をしていた。
徐々に視界がぼやけていく。だんだんと白い霞に消えていくマリアンヌちゃんに、あたしは手を伸ばした。次第に濃くなっていく死の気配に、恐れをなしたのだ。
怖い。寒い。ねえ、助けて。
でも、そんなみっともないことはマリアンヌちゃんには言えなくて、唯々手を伸ばす。皆は知らないけれど、あたしは存外見栄っ張りなのだ。だが、このことを知る者はもうじきいなくなる。秘密すら道連れにあたしは死んでいく。あたしがこんなつまらない見栄を抱えて死ぬなんて、誰が予想したことだろう。いつになく感傷に浸りながら、ぼんやりと虚空を見つめる。既に、あたしのひとみには一切のものが映っていない。