次の仕込みの話に、梶ちゃんは非常に困った顔をした。自身の費やす時間や面倒や苦労は特に問題視しない彼であるので、この困ったアピールはそれが彼だけで完結しないこと一点に対するものだ。
それはそれとしてやって貰いたいことはやって貰わないと困るし、梶ちゃんだって『できない・やりたくない』とは絶対に言わない。ただ困惑をしているというだけで。
「こんなこと、門倉さんに頼んで良いんですかね?」
「逆に他の誰に頼めるの、梶ちゃんが?」
彼はびっくりしたみたいに俺を見た。その目が『たしかに!?』と言っている。このコは相も変わらずどうしようもなくこうで、なんだか俺を不安にさせる。不安?
「役割的には別に夜行さんでもちゃんみだでも問題はないよ」
解ってると思うけど。
「いやええとそうですよねそのアレですよね、門倉さんにお願いしてみます」
ばたばたと着替えを済ませて―まあいつもの黒いシャツ、それ以外を持ってないみたいな早さで―部屋を出て行った。
閉じていく扉を見送りながら、梶ちゃんに洋服を贈ってみるのはどうかなと考える。例えば浮かれた配色のTシャツなんかを。彼は多分喜んで着てくれるし、クローゼットの前で少しは悩むことを覚えるかも知れないし、それを認めた彼の立会人がどう反応するかが怖いフリをして超楽しみなのは間違いがない。
馬に蹴られて怪我をしたいわけじゃないし、殺される猫に成るつもりもないけれど、怖いもの見たさというのは確かにある。
今、梶ちゃんはどんな顔で門倉さんに対しているのかな。簡単なようで彼には多少ハードルが高いオネガイであることも予想している。
俺の指示なのは今さら隠しようがないし、逃げ隠れもしないけど、次に会ったら鬼の形相で追いかけられたりするだろうか。だとすると次の勝負は追いかけっこかな。心臓くらい楽に賭けるノリでないと世界平和なんて夢のまた夢だ。
カット
Latest / 34:44
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
頂いたお題
初公開日: 2021年06月28日
最終更新日: 2021年06月29日
ブックマーク
スキ!
コメント
10.アーティフィー(紅葉 戻る 雲)
#文字書きワードパレットに挑戦。 お題)水上さんあたりで。
つがなし七生
スマホでテスト〜
フリック入力でできるかな?
つがなし七生
筋トレ
アヤカさんはミモザがこぼれるように咲く頃、動物園のペンギンの檻の前で懐かしいおもかげを見た話をしてく…
瀬をはやみ