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そのつややかな唇に、とくんと胸をはねた男の子は数知れない。先輩のリップはいつも決まって真っ赤だった。紺のセーラー服に真っ赤なリップ。おまけにお気に入りの香水までつけちゃて。そんな感じで廊下を歩くのよ。そしたら、どう。みーんな、先輩に視線を泥棒される。
もちろん、リップも香水も校則違反。だけど、それら禁止物によって引き出される先輩の魅力は計り知れない。まあいっか、って、許してあげてほしくなる。お願いだよ、先生。先輩から取り上げないで。
「やっぱさ、違うんだよ」
舞香はぽつり、と言った。視線の先には先輩がいた。先輩はよく図書室に姿を現す人だった。昼休みになれば、一人でやってきては立ち読みをして去っていく。私と舞香は図書当番で、よくその姿を目撃するのだった。
「蕾先輩って、なんか、先生と付き合ってるって噂あるじゃない」
「あるね」
「18よ。先輩といえど。私たちと2つしか変わらない。けれど、本当に先生と付き合っているとしたら、女子高生って身分のほうが間違ってるのかもとさえ思えるよね」
私にとって居心地のいい、この高校という場所が窮屈に思えるって、なんて大人だろう。大人の世界に十分対応していけるのに、子供のふりをしている先輩。お茶目でかわいい。
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薫瑚
春を待つ蕾
初公開日:
2021年06月17日
最終更新日:
2021年06月17日
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