「お願いします!あなたしか頼りがいないんです!!助けてくださいっ」
「おい人間、これはどういうことだ?」
やれ忙しくなく巡る日々の仕事を済ませていた時だった。
連日自分が担当する魔界の設備管理やら人事異動やらを休みもなく続け、そちらにばかり気を遣っていたせいか、不意に起きる召喚の呼び出しに少しばかり気づくのが遅れてしまったのだ。
瞬きのような短い時間、気づくと自分は下界のとある1室へと佇んでいた。しかしそこは毎度喚び出されているような暗く湿った場所ではなく、儀式の際に発生したであろう煙が邪魔をしているが明るく清潔感に満ちた空間だった。
このオレ様を召喚するならそれ相応の力を持った高位の術師なのだろうと呼び出した本人を探すが、あいにく無様にオレの左足にしがみつく小娘以外に召喚者らしき人影は見えない。
「おい小娘、召喚者は貴様か?」
「おねが、たしゅけてくらはい、もう後がないんですぅぅ」
暑苦しいわ、邪魔でしかないわで振り払おうとするものの、力を入れようとしても上手く足が動かないところを見ると術者はこいつで違いないようだ。こういう時ほど召喚者に召喚されたモノは危害を加えることが出来ないという制約が憎らしく思える。しかし、魔界での仕事も山積みで下界で無駄な時間を費やしている余裕も早々ないのである。喚ばれたからには仕事をしないと向こうへは帰れないのだ、面倒ごとはさっさと終わらせて帰るに限る。
「おい、話を聞け。おーい、いい加減にしないと燃やすぞ」
「ひぃっ、すすすみませんっ!燃やすのだけはご容赦を……!」
左足を振って、離せと意思表示してみても小娘はぐずぐずと泣いて縋りついたまま一向に話が進まないので実力行使に出てみたところ漸く会話が成立するようになった。
「さて、では自己紹介といこう。オレは大悪魔であり魔界の主、ベルゼブブというものだ。以後お見知りおきを、レディ。さて、お前の願いはなんだ?」
やっと離れた小娘に声を掛ければ、いやレディだなんてそんな恥ずかしいなぁなどと顔を赤らめ両手で顔を隠していた。はぁ……これは結構面倒な手合いな気がするな。
「はっ、はじめまして!わ、私はそのいま専門学校に通っててもう就活をしてるんですが、そんな自己紹介って言えるほど立派な経歴も血筋もないですし。その、まさか貴方様みたいな高貴な方が出てきてくれるなんて思ってもいなくてですね、私なんかのところに来てくれるだなんて何かの間違いだったり?なんて思っちゃってですね、えっと、だから」
「……で、願いは?悪いがこっちも仕事が立て込んでいるんだ。本来キャンセルなんてものは存在しないが、こちらとて忙しい。お前のような小娘には対価も期待できそうにないしキャンセルというのなら今回だけ、特別に、お前の精力を魔界までの片道分いただくだけで今回は許してやるが?」
吃るだけ吃って一向に話は進まない、噛み合っているようで噛み合わない会話に苛立ちが募っていく。暗に早くしないと帰ると言えば小娘は漸くこちらへと向き直り慇懃に頭を下げた。
「ま、待ってください!お願いしますっ、あなた様の御力を貸してほしいのです!」
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天使も仏も助けてくれないので悪魔に縋ります
初公開日: 2021年06月07日
最終更新日: 2021年06月07日
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コメント
就活に行き詰まった女の子が藁にも縋る気持ちで悪魔を召喚したらめちゃくちゃ偉い人を呼んでしまったお話。
軽い雰囲気にしたいけど重い話がベースなのでご注意ください
おそ松さんの二次創作です