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遠目から見ていても酔いが回っているだろうな、とは思っていた。
旧い知り合いを募って行われたゆるい宴、ゴールデンウィークも終盤を迎えた皐月の初旬。休日で暇をしている連中が多かったのか彼女の人望ゆえか、そこそこの人数が集まった飲みの席は普段よりも活気があり、それなりに盛り上がりを見せていた。
最初こそ各々の知り合いと会話を弾ませていた僕らではあったが、夜半を多少超えると、唯一の良心であった未成年の子たちが居なくなったり、絡み酒をしてくる面倒な連中が増えたりして段々と収拾がつかなくなってきたところでタガが外れた。
具体的に何か問題が起こったのではない。ただ、悪酔いした彼女がへらへらと僕にじゃれついてきたのが運の尽きだった。
「シ~ンさん、飲んでますか~?」
普段よりも間延びした声、もたれかかってくる火照った身体、酒臭い息。いつもであれば早々に追い返すところだが、僕も僕で酔いが回っていたので雪崩れてきた身体をどうにか受け止めて返す。
「まあ、そこそこ。君はもうやめた方がいいと思うけど」
「なんでですか?」
「ハグ魔の被害者が増えるから」
本当のことを言うなら、ただ単に彼女が他の男にまで抱き着こうとするのが嫌なだけだ。ただ、今僕を下敷きにして、えー、とかノリ悪いー、とか零している酔っ払いに何を言ったところで話が通じないのは目に見えている。薄めに薄めたウーロンハイを流しながら、彼女を受け流していると、寄りかかっていただけの彼女の腕が僕の首元にまで垂れてきた。
何かと思って振り向くと、頬を赤らめたままの彼女が不敵に笑ってみせる。
「ふふ、いいことを教えてあげましょーか」
いやな予感がした。それを聞いたら、外れかかった理性の蓋が開かれてしまうような、漠然とした不安があった。
小憎たらしい表情で彼女は笑む。やけに端正な顔立ちをした悪魔は、葡萄染の瞳を瞬かせるとこう囁いた。
「こういうの、シンさんにしかやってないです」
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初公開日:
2021年05月07日
最終更新日:
2021年05月07日
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