写真を見るまで忘れていた。幼い日のワンシーン。
俺たちを父が見守り遺した写真が記憶を引き起こす。
「初めて二人にお使いを頼んだ時のだね」母がこちらに差し出したのは、小さい兄と俺が手をつなぎ歩く姿。車道を挟んだ向こう側、電柱の影から撮った写真だった。
背にはそれぞれ母手製のリュック。兄の空いた手には近所の商店のビニール袋が引きずられ。白い何かを引き連れていた。指さして「なにこれ?」とつぶやくと
「んーお米?砂糖かな」兄が首をかしげて俺を見た。
「道ができてるぞ」
「道は人が歩いた後に出来るものだからね」
「いい風に言うなこれNGだよな」
「これくらいかわいい失敗だよ」
見守る母と、父の遺影は穏やかに微笑んでいた。
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300字SS 3月
初公開日: 2021年04月03日
最終更新日: 2021年04月03日
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