年の瀬も近づいて、手足の先から身体の芯まで冷え切ってしまいそうな寒い冬の夜にはよく思い出す。幸田露伴が帝国図書館に転生したのは四年前の、年末のことだった。
あのときは朝から晩まで、何度潜書しても露伴の魂が見つからない日が何日か続いていた。今日も駄目だった、このまま彼を見つけることが出来なかったら。帰宅が夜の十時になる日が続いてた。懸命に露伴を探す尾崎達と別れ、疲れ切った身体を引き摺るようにしてひとり帰路につく頃にはそんな不安で胸をいっぱいにしていた。だから、冬の夜道を歩いていると、そんなこともあったななんて、ぼんやりと思い出したりする。
あの頃は何もかもが初めてのことで、だから、いっぱいいっぱいだったんだろうなあと、今になって司書は思う。その分、露伴がようやく転生を果たしたときは、本当に嬉しかったのだ。厳しく見える顔つきなのに、こちらを見やる目は確かに優しく細められていたこと、どうしようもなく身に沁みたことを覚えている。
この図書館に来たときのことを時々、ふと思い起こすことがある。
そうなるのは大抵、何気なく司書を眺めているときだ。支えているつもりが、いつの間にか支えられるようにもなった。そう思わされるとあの頃を懐かしく思いもする。
労ってやってほしい相手がいる、五重塔の世界で出会い、彼に『外』の世界に連れ出される前にそう言われた。その相手が誰かは直ぐに分かった。
図書館に転生を果たしたとき、不安そうにしていた表情が、こちらの姿を認めると次第に和らいでいって、やがてこちらを憧れの眼差しで見上げていたから。
何かの拍子にぽっきりと折れてしまいそうな奴だと心配になった。良く紅葉達に付き合ってくれたと労えば緊張の糸が切れたようにその場に座り込んで、良かったと呟いたのを覚えている。
今ではそんなこともなくなって図太くなったようだが。
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文司書ライブライティング
初公開日: 2020年12月26日
最終更新日: 2020年12月26日
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