「おい、萩原ァ! なんっだよこれ!」
仕事から帰ってきた松田を問答無用で風呂場に押し込んだ萩原は、大声で名前を呼ばれてヘラリと緩い笑みを浮かべながら声のする方を見やる。
萩原の目に映ったのは腰にタオルを巻いただけの松田の姿だった。壊されそうなほど勢いよく押し開けられた寝室の扉を後ろ手に、惜しげもなく裸体を晒して仁王立ちしている。まだ濡れている髪はいつものふんわりとした癖っ毛を真っ直ぐにして、水を滴らせていた。髪から落ち、頬や首筋を通って、整った筋肉の上を撫でていく雫が松田の色気を増大させていて、萩原は思わず唾を飲んだ。目に映った松田の姿が想像していたものと違い、残念だと思う気持ちと、ラッキースケベに興奮する気持ちが相反する。
「わ、陣平ちゃんのえっち!!」
ふざけて両手で顔を覆いながら分かりやすく指の隙間から松田を見続ける。「研二、目のやり場に困っちゃうー!」なんて軽口を叩くと空いていた松田の左手が拳を作って頭に降ってきた。
右手が飛んでこなかったのは右手が塞がっていたから。右手いっぱいに大きな白い布きれを抱えた、ほぼ裸の松田を見ながら、萩原は本来の見られるはずだった松田の姿を脳裏に浮かべた。松田の手にある白い布きれ。そう、本来はそれを着て出てきて欲しかったのだ。
「そういう話じゃねぇんだよ! お前、俺のスウェット隠しやがったな!」
そうだ。松田がこの服を着てくれるようにと普段着ている黒いスウェットを隠して違う服を置いたのである。完全に萩原の趣味の服。激安店で売っている安っぽいものではあるが、生地はしっかりしていて大きめのサイズのものだ。俺ほどではないが、身長も高くて筋肉もある松田がギリギリ入るか入らないかくらいのサイズ。
その全貌を思い出す前に、松田が手に持った服を広げて見せてきた。
「かわりにこんなもん置きやがって!!」
視界を埋め尽くす白から少し距離をとると、全てが視界に収まる。白衣の天使のモチーフとなるナース服だ。それもミニスカの。几帳面に全て持ってきたようで、ぼろぼろと小物も落としていく。真っ白なニーハイにナースキャップ。萩原がご丁寧に用意した黒の下着まで持ってきていた。もちろん女性ものだ。
「だぁって、陣平ちゃんがそれ着てるの見たかったんだもん」
いじける萩原の言葉に、松田は怒りの感情が上限突破したのか「あのなぁ……」と呆れを露わにした。「なぁ、だめか?」と上目遣いで松田を見つめると、軽く松田は息を詰まらせた。松田は、この、捨てられた子犬のような萩原の表情にめっぽう弱いのだ。ついついなんでも許してしまいたくなる。実際許してしまっていた。松田はどんなに無茶な、どんなに辱めをうけるお願いでも、萩原に頼まれると最終的には承諾してしまうのだった。
「なんで、こんな……」
まじまじと服を見始めた松田が言葉を切った。不自然に途切れた言葉の先を知るべく、萩原が松田の表情を見ると同時に、手で押さえられた松田口からこぼれたのは小さなくしゃみ。
いくら部屋の中が暖かいとは言え、裸でうろつく季節ではないことくらい、窓につく結露を見れば明白であった。
「松田、そんな格好じゃ風邪ひいちゃうだろ。ほら、服着なよ」
そう言って広げていたナース服を松田の胸元に押し付ける。ヒヤリと冷えた布の感触に、不随意に松田の肩が震えた。「ね?」と萩原が首を傾げると、松田は陥落寸前だ。
「ね、松田。俺のためにこれ、着て見せてよ」
乞うように青空を詰め込んだ松田の瞳を見つめる萩原。青に映る自分の姿が必死で滑稽に映る。松田の目を通して自身のギラつく欲情した瞳を見せつけられて、萩原は心の中で自嘲した。どれだけ必死なんだ、と。
「────ッ、今回だけだからな!!」
押し負けた松田が頭を抱えて白衣を握りしめる。やはり、萩原のお願いを断ることはできないのだった。
「よっしゃ!さすが!  陣平ちゃん愛してるぅ!」
「茶化すな、ばかやろう」
落とした小物も拾い上げて松田は部屋を出ようとする。髪から滴る雫が肌を滑るたび身震いする松田を見て、萩原は咄嗟に引き留めた。
「松田、部屋出ると寒いよ」
「……だからなんだよ」
嫌な予感がする、と油を差し忘れたブリキの人形のように、ギギギ、と首を動かす。もちろん萩原の口から出てきたのは松田の予想通りの言葉だった。
「風邪ひいちゃったら困るし、ここで着替えなよ」
「ッ、はぁぁっ!?」
先ほどから、風邪をひくから、という心配の言葉が乱用されている。もちろん萩原の心中に心配という単語はあるのだろうが、それ以上に下心がありありと感じられる。
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向き
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松田くんにコスプレしてもらいたい人生だった😌
初公開日: 2020年12月19日
最終更新日: 2020年12月19日
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コメント
腐向け萩松小説です!
松くんに(嫌々)コスプレしてもらいたいという欲望から書き始めます笑
えち手前まで書けたらいいなぁと思っております!ぜひ気軽に見てくださると嬉しいです〜!!
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