「まったく、今さら何を恥ずかしがるのですか? もう隠す物なんて残っていないでしょうに」
 両腕を組んだレイズがため息混じりにそう呟いた。確かにそうかもしれないが、と呟く私の顎に手を触れて黙らせた彼女はそのまま唇を塞いだ。
「口答えはしない、と約束したはずです」
「分かったよ。……それで、一体何をすればいいんだ?」
「簡単なことです」
 と彼女はすたすたとベッドの方へ歩み、倒れこんで体を沈ませ、両手を上に伸ばしてこっちへ来いとジェスチャーをした。
「私を気持ちよくさせてくれれば良いのです」
 ロドスには様々な種族のオペレーターがいることを、私はチェルノボーグの棺桶から目覚めここへ辿り着いてから痛感することになった。感染の有無、身分、人種を問わず採用する人事部の手腕は昼食時の食堂を見れば良く分かる。目の前に立ったヘラグやシルバーアッシュのお陰で前のメニューボードが見えなくなったこともしばしばだ。
 レイズも、そんなロドスのオペレーターの中でただ一人だけの種族という珍しい出自を持つ人物である。「麒麟」という古代炎国にルーツを持つ学者一族の家系の血を継いでいると文献調査に付き添ってくれているときに彼女が言ってくれたのを私は覚えていた。彼女がロドスに来る前にニェンと色々あったためラヴァから事の顛末を聞いていた私は炎国には歴史ある家系が沢山あるのだなぁとぐらいにしか思っていなかったが、レイズと仕事を共にするにつれて彼女の振る舞いや言動から何か大きな背景を感じ取れるような感じがするのを覚えるようになった。
 ただ、彼女も一人の女性であり、疲れもすれば眠るロドスの一員なのだ。官僚出身ということもありデスクワークに精通している彼女と意気投合した私は、気づけば二人だけで食事にいくような仲になっていた。
「かといってそれとこれは話は別じゃないか……?」
「一体何が違うというのですか。あなた、どうせ大方記憶を失ってしまったから何かしでかしてしまうんじゃないだろうかと心配になっているだけではないのですか? まったく、もうそんな過程は通り過ぎたと思っていたのですが……。良いでしょう、説明するのは嫌いじゃないですからね」
 良いですか、と彼女はテーブルに座ってディスプレイを呼び出しながら話し出す。
「角はフェリーンでいう所の耳、ヴァルポでいうところの尻尾、アダクリスの尾、それらと大体同じようなものです。つまり大事な体の一部であり、自己を表現する部分でもあり、また定期的な手入れを必要とするものでもあるのです。みだりに触ってはいけないし、ボディタッチと同様に特別な意味を持つことも多いのですよ」
「ふむ。拘りがあるんだな」
「はい。ではもう少し考えてみましょう。角や尻尾が定期的な手入れを必要とするのであれば、髪と同様にそれを専門に取り扱う職業や産業があることは納得がいくのではないですか」
 需要あるところに供給ありきです、と彼女は熱っぽく語りだす。
「古くは上流階級、王族や有力貴族たちが自らの権力や財力を誇示するために飾り付けや模様などの装飾を施すことで利用してきました。ファッションと同じように、国全体の発展に伴って庶民達に広く――勿論その間に多種多様な広がりを見せました――普及していくと同時に家庭内の親が担う仕事から外部の職人に外注するようになっていったのです。他のいくつかの点を考慮しても角や尻尾は自己アピールの一部として捉えられてきた歴史が………」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
 ヒートアップしてそのままずっと喋り続けるような予感がしたので慌てて止める。彼女は気になったことについてとことん調べるタイプだ。その気になれば文献を引っ張り出して講義を始めかねない。
 何とか本来の議題に軌道を戻すことに成功した私は、喉が渇いた彼女にコップを手渡しながら内心ほっと胸を撫でおろした。あの流れで夜を越したことだってあるのだ。
(今日はここでおしまい)
Latest / 49:15
01:21
Iky
アイデアとこの文章しか浮かんでいないので最初は難航すると思われる
46:03
Iky
今日はこんなところで。ありがとうございました。
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向き
「レイズが角をごりごりされて蕩ける話(仮題)」執筆配信
初公開日: 2020年12月12日
最終更新日: 2020年12月12日
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Ikyです。アークナイツ、レイズのssを書きます。