カフェ・内・昼
有希と相生と部長が都内のカフェで座っている。有希はカフェラテ、相生と部長はブラック。少しボーッとするように有希は窓ガラスから見える街並みを見ている。
部長「いいんですか? 応援しに行かなくても」
有希「(うなづく)はい」
相生「ま、ああいう子は強いよ。やろうとしたことをちゃんと準備して、ちゃんとやれる子だから」
部長、鞄から手帳を取り出して少しばかりページを捲る。
部長「ライターや文字を仕事にしている人にとって、言葉を知る、つまり食べることは生きがいです。もし彼女にとって、その相手にとって良い言葉が見つけられたということは、素晴らしいことですね」
有希と相生、お互いにうなづく。
部長「有希くん」
有希、カップに口をつけてびくっとする。
有希「綿毛さんも言っていた様に、言葉は一つだけじゃありません」
回想
綿毛「紙に書くのが言葉なら、声だって言葉だよ」
有希宅・夜
散乱した書類の真ん中で、有希は声を上げてみる。
有希「アー、アー」
本を手にとって、ソフトカバーを触りながら「なめらか」と言う。
もういくつか例を上げる
有希、書類の山に体を埋める。
有希「そうか、僕は、声を軽んじていた」
今までの記憶が蘇る。うまく扱えなかった言葉たち。
本棚の奥の方に閉まってあった『マナー言葉大全』を取り出して、そこに書かれた言葉をつらつらと声に出して読む。
有希「じゃあ、どうやって言えばよかったんだ、あの時」
雨はいっそう強くなっていく。
事務所・朝・
倉持が有希を探して歩き回っている。
倉持「おい、有希に連絡がつながらないぞ。また親族がらみかなんかか?」
相生「風邪らしいぞ」
倉持「風邪!? もう10月だぞ。あいつこの忙しい時に…」
事務所中央のホワイトボードに、『立元個展11/30』と書かれている。その下に、『印刷依頼は1ヶ月前に』と書かれて、赤丸で囲われている。
有希宅・内・朝
有希、目が覚めると体が重く感じる。
朱音宅・昼
羽垣と朱音は家で食事をしている。
朱音「うわーすごい。ありがとう羽垣ちゃん。私料理とかできなくてさあ」
羽垣「うちは料理当番制なんで、任せてください(ガッツポーズ)」
朱音「なんか、すっごい思い当たるのがいたわ」
有希宅・内・昼
有希、くしゃみをして毛布を被り直す。
有希「ダルっ(と言いかける)……すごく倦怠感を感じる…(寝返りをうつ)言葉を大切にって、これで良いのかな」
どっちの展開にしようかな
1元気だと言い続けてたら元気になっちゃったからどっかいこう
2元気になった後、大塚から電話でいついつどこどこへきて欲しいと言われていく
2かなー
○○駅前・昼ごろ
有希が駅から上がってくると、大塚が既に待機していた。
大塚は有希を見つけると歩きながら「おはようございます」と言う。
有希「お、おはようございます。よろしくお願いします(軽く片言で)」
大塚「な、なんか気合、入ってますね。私、嫌いじゃないですよ」
萩原高校・美術部室
大塚「ここは、立元先生が昔通っていた部室です。有希さんには、ここの空気感を元に、パンフレットを作成していただきたいんです」
木製の椅子と傷が目立つテーブルが三つほどある。テーブルには、ペンや鉛筆が入れられた筒がある。有希が軽く椅子を触ると、脚の高さの違いでガタガタと音が鳴る。
有希「随分と、古さが目立ちますね」
大塚「この頃から、ずっと絵を書いておられたそうです」
有希、棚の引き出しを開けると、『平成〇〇年合同誌』と書かれた冊子がいくつも出てくる。開くと、学生が書いたと思われる絵がいくつも重ねられている。思わず「すごい」と呟く有希。
しばらく冊子を読んでいると、一枚の絵を見て有希は手を止める。
有希宅・内
相生「開けな!」
有希、ビクビクしている。
有希「なんだか怖いんだ。僕が言葉が下手なせいで、誰かが」
羽垣「きっとね、言葉は声だけじゃない。コミュニケーションだって言葉よ」
有希「どういうこと…?」
羽垣「例えばね、朝友達と会う時に、大きな声でおはようって言ったら、誰だって気持ちいいなーって感じるでしょ(うん)好きだって言う時も、なんで好きなのかもわからないんじゃ、好きってだけ言われてもわからないよ」