何度、この手を振り解いただろう。
「なんで、外だとダメなんですか」
何度も、躱し続けた質問。
「だって、変に見られる」
「俺は別に気にしねぇっす」
そうなのかも、しれないけど。でも、俺は気にするよ。俺は別に、どう思われたっていいけどさ。お前まで変な目で見られたら、と思うと、どうしてもそんな気になれないんだ。
本当は俺だって、繋ぎたい。いつだって、お前のその手の温もりを感じたい。でも、どうしても、嫌なんだ。お前が好奇の目に晒されるのは、どうしても、嫌だ。
「別に、誰にどう見られてもいいじゃないですか」
西谷は、知らないだけだよ。好奇の目に晒されて、陰である事ない事言われる怖さを。俺は、見た目がこんなだから、よく色んな噂をされた。だいたいは笑って流せる事だったけれども、正直結構傷付く事もあった。お前には、そんな思いをさせたくないんだ。だから、わざわざ噂の火種を作らなくてもいいじゃないか。
臆病な俺は、ずっと、ずっと、そう思っていた。
「いきなり、どうしたんすか」
「まぁたまにはこんなのもいいんじゃない」
遠い異国の地、開放的な気分がそうさせたのか、はたまた隣でふらふらと落ち着かない恋人を繋ぎ止めたかったのか。
「もう会わないような人の目まで気にしてたら、何もできないし」
ぎゅっと繋ぐ手は、緊張ですぐに汗ばむ。身体を重ねるような仲になってから暫く経つのに、こんな事で緊張するなんておかしな話だ。
じっとこちらを見つめる西谷の視線を感じる。無言の圧力が怖いけれど、それを悟られるのは嫌で、気づかないふりをして繋いだ左手に力を込める。
やっぱり、変に思ったかな。今更何をって思ったかな。
「そうっスね」
左手をぎゅっと握り返される感触と、柔らかい声。恥ずかしくて、西谷の表情を見る余裕なんかなかったけれど。
きっと、ものすごく優しい笑みを浮かべてるんだろうな、と思った。
たくさんの人が往来する観光地のど真ん中。
人に見られる事が嫌だった俺にしては、随分と大胆な事をしたもんだ。
繋いだ指先から伝わる、西谷の、温もり。
なんだ、別に、大丈夫じゃないか。
まるで世界に二人だけのような感覚に、俺はしっかりと、指を絡めてその手を繋ぎ直した。