第12回弟いちワンドロワンライ「アニメ」弟いち
「昨日の夜、みんなが寝静まって真っ暗になったブクロで旧サンシャイン通り歩いてたらさ、ビルのすげえ高いところに真っ赤なフクロウがいて……こう、ばさっ! と羽を広げて急降下してきたんだよ。そいつは音もなく地面に降り立って二本足で歩き出した……人間だったんだ。俺の方に向かってきてニカッと笑った。兄ちゃんだった! そん時の俺の興奮わかるか!?」
「まーた始まったよ、じろちゃんの兄ちゃん神話」
「あっ、てめーら信じてねぇな!?」
「MCBBがすげーのはわかるけどよ~、じろちゃんはちょっと誇大妄想なんだよなぁ」
「コダイ……? とにかく妄想じゃねぇって!」
「こないだはビッグブロが瞬間移動したって言ってたよな。コンクリートを素手でブッ壊したとかも嘘くさかった」
「いや、マジなんだって!」
「じろちゃんは一郎さんのこと好きすぎて夢見ちゃってんだよ。ラノベの読みすぎじゃね?」
せっかくとっておきの兄ちゃんのカッコいい話を教えてやってるのに、クラスの連中はすぐ笑い飛ばす。俺は絶対に、兄ちゃんに誓って嘘なんか言ってねぇってのに!
『……つまり、山田一郎が警察と事前に連携してたから、犯人をスムーズに逮捕できたし被害も最小限に留められた。依頼人と最初に会話したときの違和感から万全を期していたんだ。この洞察力と行動力、そもそも警察に絶大なる信頼を置かれていた人望からして、事件が始まる前に解決を約束されていたようなものだよね』
『中善寺さんの話は面白いけどちょっと作り話っぽいんだよな。元ネタ小説?』
『全部事実だよ! 彼の活躍に嫉妬するのはわかるえど、虚構を疑うのはやめろ!』
『この前記事削除されてたろw』
『あ、あれは、中王区の汚職について触れちゃったからで、むしろ削除されたこと自体が真実だったことの証左だとわからないのか?』
『ゲーム脳ってやつじゃね?』
この僕がゲームなんかに影響されて嘘を騙るわけないだろ。ダメだ、常識にとらわれたネットの凡人どもにどんなに一兄の栄華の一端を示してやったところで理解できない。一兄はこの腐った時代を彗星のごとく駆けるカリスマだから、古い地球人にはまだその存在価値の偉大さが理解できないのだ。
「やっぱ山田一郎を兄ちゃんにもつなんて、フツーのやつにはアニメ並みの夢物語みてーだな」
「ましてその一兄が、夜は僕らに抱かれるお姫様だなんて、アニメにすら置換できないだろうね」
これは、アニメじゃない。