貞観三年、すっかり山の葉は落ちて檜皮葺きの屋根に朽葉が積もっていた。苔むした階段を一段ずつ登ってゆくと堂宇が見えてきて、痩せた僧が荻原上総守を待っている。荻原が軽く会釈をすると僧は堂宇のなかへと案内した。
木彫の観音立像の脇に文机を置いて、小さな人影が座っている。薄暗い中で目をこらすと十歳ばかりの少年だった。荻原は小声で僧に問うた。
「あちらが虎松さまであられるか」
荻原の声で少年が顔を上げる。青白い顔に切れ長の目が浮かんで、固く唇を引き結んでいる。荻原が草履を脱いで大股で少年に歩み寄ると、わずかに身を固くしてこちらに目線をじっと注いでいる。
荻原は少年の目の前で膝をつき、目を合わせた。恐れのようなものはなく、ただ両の目が見返してくる。
「荻原上総守でござる。虎松さまにあられるか」
声変わりを経ていない少し甲高い声が言った。
「いかにも」
とりあえずここまで!ありがとうございます!!