なんでもいいからおそろいものが欲しい。
そう望んだのは昔からであったが、幼少の頃の師匠と大師匠がそっくりの道着で歩いている姿を見るととうとう抑えが利かなくなった。悟飯のことだから勝手に道着を模倣しても怒られることはないだろうが、山吹のそれはこの都で着ている人間が多すぎた。亀仙流を極めた武闘家の証に対し、特別感を求めるというのも冒涜が過ぎることである。ともかく、一番目立つ服装を同じにするという方法は却下である。まずは小物から、と思ってもコート姿が制服のようなトランクスでは、うまく馴染ませられるものはあまりなさそうだ。いっそ美意識を忘れてしまえばブーツなどを履き替えられたかもしれないが、それはそれで感性が許さなかった。結局、最初は小さな事からと、贈り物を用意したのである
「タオル? 助かるよ! ちょうど新しいものを買おうと思っていたんだ」
「それなら良かったです。触り心地が良いものができたから、悟飯さんにも使って欲しくって」
スポーツタオルは、修業を行う戦士達にとっては必需品といっても良いだろう。体を動かせば当然汗をかくし、激しい動きになれば尚更だ。悟飯はあくまで指導者の立場としてここにいるけれど、後ろでぼうっと見ているだけとか、軽く手合わせをしてやるだけなんてことは考えにくい。それはトランクスの記憶が証明するように、おそらく事実なのだろう。生徒の前で全力で汗をかいて、お互いを高め合う。想像すれば嫉妬の気持ちも生まれるが、悟飯が教師職についてくれていなければ今一緒に会話もできていないのだ。贅沢なんて言えるはずも無かった。
「へえ、君こういうのの開発もしていたのか」
「お、俺というか実家が、なんですけどね」
「そっか。……すごい、ふかふかだな。ありがとう」
開発からこだわったのは、大切な人の肌に触れるものだったからだ。もちろん下心なんてものはない。……と言えば嘘になってしまうのだろうが。諸々は捨て置いても、彼とおそろいのものを持ちたかったのは事実である。ラベンダー色のそれに顔をうずめてみせた悟飯の姿に心臓が跳ねて、尚更言い訳をしようという気は無くなった。
「売るのかい?」
「そ、そうですね、ゆくゆくは」
「ブルマさんも鼻が高いだろうな、息子がこんなに多彩だったら」
「母さんにはまだ内緒ですからね! 流通させるとなると本当に厳しい人なんで」
一応、ブルマもこの都の協力者としてある程度の特権は許されていた。その一つが都の人間との交流で、悟飯とも何度か連絡を取り合ったと聞いている。どんな話をしたかは教えてもらえなかったけれど、余計なことを言われているのも察せられたから藪をつつく気にはならなかった。
今回悟飯に口止めしたのはもちろんそういった理由では無い。ただ、トランクスの母親は賢い人なのだ。おそらくそれだけでトランクスの魂胆はお見通しだろう。その場で余計なことが言われなかったとしても、後々からかわれるのは目に見えていた。
「合格どころじゃないと思うんだけどなぁ」
「ありがとうございます。また、使いづらい点とかあったら聞かせてくださいね。
「そんなのなさそうだけど……わかったよ。気付いたことがあったらまた伝えるから」
会話のきっかけとしても機能してくれるなら万々歳だ。ここまできたら本気で売ることも視野に入れないといけなくなってくるが、その場合は悟飯と自分だけのオリジナルデザインをついでに作ればいいだけの話である。むしろその方が特別感もでてくるものだろう。多分悟飯が気付くことはないけれど。
「ありがたく使わせてもらうよ。……そうだトランクス、今から時間いいかい?」
「一汗かきますか?」
「君の都合さえ良ければ、な」
「もちろんですよ。俺も、せっかくだから持ってきたのを使います」
黒いタオルを鞄から取り出せば、悟飯もニコニコと笑った。同じ色にすることができなかったのは尻込みしたようで情けなかったけれど、彼の髪や瞳を見ていると考えも変わってくる。二人用のカラー展開は、すぐに決めることが出来そうだった。