おれは恋をしている。
 それは紛れもない、「片想い」だ。あァ、別にふられたとかそういうんじゃねぇ。ただ好きな相手には別に、想う相手がいたってだけだ。
 そいつの名前は、ルフィ。――麦わら帽子が良く似合う男。そう、男だ。
 憧れの女性は何人もいた。なんたって女性は誰しもがきれいで可愛くて、素晴らしい存在だから。だけど……な。こういうのは、初めてだった。命を賭して恋をするなんざ、生まれて初めて、だった。
 だってのに、ルフィには想う相手がいる。トラファルガー・ローとか言う、目つきの悪ィ、愛想のねェやつだ。恋愛沙汰に疎いはずのルフィが、はっきりとそういう「好き」を自覚したのも、恐らくは初めてなんだろう。無邪気におれに、相談してきた。
「トラ男と一緒にいると、ここのとこがぎゅーぎゅーするんだ。何でだ?」
 そんなもの、答えは一つしかない。おれと同じだ。おれがルフィに抱いている感情と同じものを、ルフィはローに抱いている。……おれは、な。ルフィが幸せであればいいって思うから、ちゃんと教えてやった。
「それは恋だろ」
 ルフィは何度か瞬きをして、不思議そうに首を傾げて。それから自分の胸をぽんぽん叩いて、見たことのねェような照れた顔で笑った。
「そっか」
 もっと戸惑うかと思った。そうかァ?とか、言うかと思った。だけどルフィはすぐにそれを、恋だと認めた。
 そこでおれの失恋は、確定した。ルフィは本気の恋をしている。おれと同じように、生まれて初めての恋だ。そんな表情を見せられて、おれはどうしたらいい?
――簡単なことだ。おれの想いは秘めたまま、ルフィに知らせることはねェ。ルフィが選んだのはおれじゃなくて、ローだった。それが事実だ。
 だけどある日、突然ルフィが言った。
「おれ、トラ男にふられちまった」
 鼓動が強く跳ねた。ふられた。ふったのか、あいつは。ルフィを。おれが命を賭けて焦がれている存在を。ルフィには内緒だが、おれはそのとき多分、にやけそうになっていたと思う。――かっこ悪ィだろ? おれにもチャンスがあるんじゃねェか、なんて考えてた。
 でもな、違った。「ふられた」と言ったルフィはその直後、「でもおれ、トラ男のことは好きでいていいかって聞いたんだ。そしたらトラ男、好きにしろ、って」……と、告げた。
 あの野郎。なんてやつだ。これからさきずっと、一方的にルフィに想われ続けるってのか。なぜ突き放さなかった。なぜ好きにしろなんて、曖昧に答えた。そんなだから、おれは……。
「あ」
 学校からの帰路。ルフィと歩いていると、急にルフィが立ち止まった。どこかまっすぐをじっと見つめて立ち尽くす。視線の先を追うと、そこにはローと、見知らぬ女性。
 そいつらはこっちに気づいていない。気づかずに二人、どこかへと消えていった。ルフィの様子を見ると、ぼんやりと一点を見つめたままでいる。
「ルフィ」
「ん」
「……その、なんだ。今のは……」
「サンジ。おれな、こういうの初めてで。誰かをトクベツにスキになるの、初めてで」
 ローのいた場所を見つめたまま、ルフィが言葉を漏らす。表情は動かない。いつもの彼は、そこにはいない。
「だから……だから、知らなかった」
「こんなに痛くなるの、知らなかった」
 胸元をぎゅぅ、と押さえつけて、それから。ルフィの表情がみるみるうちに歪んで、ぼろぼろと涙が溢れた。ルフィは感情豊かだ。泣いたり怒ったり、笑ったり、今までだって何度も色んな表情を見てきた。
 でもこんな、心臓が張り裂けそうなほどの悲痛な表情は、初めてだった。
「ルフィ、」
 思わずルフィの頭を胸に抱き寄せていた。ルフィはおれにしがみついて、何度もしゃくり上げながら泣く。胸が熱かった。
「ごめんな、サンジ」
「あァ」
「すぐ、すぐに、になきやむか、なきやむから、まって、まってくれ」
「……いい、別に。いくらでも泣け」
 初恋は、実らないと言う話を良く聞く。
 実らなければいいのに。このまま、終わってしまえばいいのに。それで二度目の恋をしたら、……たとえばおれに、恋をしてくれたら……。
 あァ、ダメだ。初恋が実らねェというのなら、おれの初恋も、また。
 バカじゃねェのか、お前。
 そんな人を殺すような目でおれを睨みつけるくらいなら、とっとと自分の気持ちを認めろってんだ。
 いつの間にか戻ってきていたローは。おれの腕の中にいるルフィを、ずっと見つめていた。
Latest / 35:12
23:11
ななし@978e5a
かんいちさんだ❤️
25:31
かんいち
かんいちさんです!
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20200813
初公開日: 2020年08月13日
最終更新日: 2020年08月13日
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