ふと目をやった壁の時計があと一時間ほどすれば日付が変わることを示している。
それと同時に玄関ドアが解錠される音が聞こえ、手早くベッドメイクを済ませた那貴がリビングへ出ると、ちょうど帰宅したばかりの歳上の恋人が手洗いを済ませたらしく上着を脱ぎネクタイを緩めていた。
「ただいま」
「おかえり。今日もお疲れ様」
受け取ったトートバッグは重たい。勤めている出版社の中でも人気雑誌を発刊している部署に所属し、それなりの立場にあるらしいから何かと仕事は多いのだ。
後輩や部下の業務をカバーすることもあるというし、ここ最近はまともな休日など無いに等しかった。
だから、この週末に取れたと言っていた休みも、もしかしたら返上になっているかも知れない…と那貴は密かに思っていた。それを問いただすようなことを言えば、恋人は真面目さゆえに落ち込んでしまうから敢えて話題にはしなかった。
「食事も出来てるし、風呂もすぐ入れるよ」
どっちも先に済ませちゃったけどと那貴が付け加えると、恋人はそれでいいと言った。
「先にシャワーをしてくるよ」
「じゃあ出てきたらすぐ食べられるように準備しとく」