今日の夕飯は、暑さを訴える尾形のリクエストにより、冷やしうどん。
たっぷりの氷で冷やして、濃いめの麺つゆにも氷を二つ。天ぷらは出来合いだけど、夏野菜のかき揚げをタイムセールで手に入れたから充分だろう。
「うわ、すげえ」
 二人でうどんをぞるぞると啜っていると、ふとテレビを見た尾形が呟いた。俺たちは二人して口数が多い方ではないので、賑やかしのためにテレビをつけている事が多い。俺もつられてテレビの方を見てみると、そこには「大食いライブ」なるバラエティー番組がやっていた。画面には特盛りどころじゃない、茶目っ気のある食品サンプルのような盛り方をされたラーメンを食べる女性が映っている。
「こういう奴って、食ってる時どんな気分なんですかね」
「俺たちが食べてる時と同じじゃないか?」
「でも、これって食事じゃなくてパフォーマンスバトルみたいなもんでしょう。……あ、」
 俺たちが話している間にも、大食い女王を名乗る彼女はラーメンを次々と口に運んで、最後にスープを飲み干してしまった。丼を置いてぷはっと息を吐いた彼女の顔は、マラソンを終えた選手のような清々しさだ。凄いなあ、と感心していると、尾形はテレビから視線を外して、かき揚げにがぶりと噛み付いた。
「俺は、美味いものは一気に食べずにゆっくり味わいたいです」
「そうだな。……いや、でも、お前割とがっつかないか?」
「え、そんな事ないと……思います、けど」
 がっついてる時なんてありましたっけ、と尾形が首を傾げる。確かに尾形は食に対してあまり意欲がない。俺と暮らすようになって、やっと「美味い飯っていうのが分かりました」なんて言うような奴だ。それが俺にとってどれだけ嬉しくて、安心したことか。まあ本人は思い当たらないだろうなと、俺はうどんを啜って、
「がっついてるだろ、セックスの時とか」
「そ、れはっ、今言うか!?」
 動揺した尾形は麦茶をひっくり返しそうになって、冷房の効いた部屋だというのに顔を赤くする。そして、俺がけらけらと笑えば、不貞腐れたように唇を尖らせて、汗をかいている麦茶のグラスに口を付けた。
「……クソ、覚えとけよ」
「覚えといてやるから、しっかり食え。ほら、かき揚げ取っちまうぞ」
「ダメです、サクサクの後につゆが染み込んだのを食べるのが美味いんですから」
 わざとらしく箸を伸ばせば、尾形は取られまいと先にかき揚げを頬張る。ハムスターのように頬を膨らませて食べるその姿に、俺はどうにも口元が緩んでしまう。
(さて、俺も食べないとな)
 ザルからうどんを多めに掬い上げ、麺つゆに沈ませて、一気に啜る。どうやら今夜は体力勝負になるようだから、しっかりと蓄えておかねば。口いっぱいに頬張りながら、はた、と前を見れば、尾形がじゃくじゃくと豪快にかき揚げを齧っている。並びの良い歯で噛み付いている。あの白い歯が次に噛み付くのが、俺の肌だと思うと、食べている傍から腹が減っていく気がした。
終わり!!!!!
視聴してくださった方、ありがとうございました(*・ω・)ノシ
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初公開日: 2020年08月07日
最終更新日: 2020年08月07日
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どんな感じなのかテスト配信。
尾月書きます。