「――ッ!」
部屋でかき氷を食べる僕を突然襲った頭痛。
昨日のお昼、「片付けをしていたら面白いものが出てきたよ」と神ヶ原さんが持ってきたのはかき氷機で、急遽合宿所はかき氷パーティー会場へと変貌した。
指揮官さんの思いつきにて始まった、かき氷アレンジ合戦でまたチーム戦になり、激辛かき氷やシロップ全かけかき氷、こういったときの恒例になっている「飛ぶ」かき氷などなど、多少いつものように慌ただしくもあったけど、暑い日に食べる氷菓は火照った僕の身体を癒やしてくれた。
次の日、お風呂の後に食堂の冷蔵庫を覗けな、氷もシロップも残っていたので今日もかき氷を食べることにした。作っている最中に食堂にやってきた矢後さんが「俺にも作って」というので、二個の器にがりがりと氷を盛り、黄色のシロップをかけて一緒に僕の部屋へとやってきてた。机を挟んで向かい合いながら氷を食べ進めていき、冒頭に至る。
このキーンとした痛みはアイスクリーム頭痛というらしい。おでこを冷やすと治ると聞いたことがあるので器をおでこにくっつけてみる。じわじわと痛みが引いていったので器を机に戻すと水滴が髪に移って張り付いて気持ちが悪い。髪を払いながら視線を感じて前を向くと、怪訝な表情で僕を見つめる矢後さんと目が合った。
「なにしてんの」
「冷たいものを一気に食べると頭が痛くなるんです。その対処法でおでこを冷やすといいって聞いたことがあったので」
「ふーん」
目の前の彼は痛みを感じない体質だ。頭痛を気にしてちびちびと氷を食べる僕と対称に、気にせずバクバク食べ進め、あっという間に矢後さんの氷はなくなっていた。僕も早く食べようと、スプーンで小さな氷山を崩していく。
「久森」
「はい」
名前を呼ばれたので矢後さんへ顔を向けると、机に身を乗り出した彼の手がこちらへ伸びる。手の平が、僕の額に触れた。
「え、っと」
「デコ冷やすといーんだろ。早く食べろよ」
「あ、……はい」
かき氷の入っていた器に手を添えていたのか、いつも暖かい彼の手はひやりと冷たい。確かにこの状態であれば、頭痛はしないかもしれない……! と思ったのもつかの間。だんだんと矢後さん距離の近さを理解した僕の顔には熱が集まる。当然、それは矢後さんの手のひらにも伝わっていて、あっという間にいつもの彼の手の温度へ元通り。
恥ずかしくても、頭痛の解消に効果がなくても、矢後さんの手が離れてしまうのはなんだか寂しい気がして僕はそのまま氷を口に運ぶ。全て食べ終わったころ、僕の頭はひどく痛むけれど、それと反対に心はぽかぽかと癒やされていることに気づく。
食べ終わったことで矢後さんの手が離れていくので慌てて掴む。お礼のつもりで骨張った指へキスをしてみた。……やっぱり、照れて恥ずかしい。
かき氷で冷えたはずの身体は、熱くなってしまったけどそれは僕だけじゃなく矢後さんもらしい。「キモいことすんな」といいながら手は振り払われたし、恋人と部屋に二人きりだというのに「もう寝る」と僕に背をむけるようにベッドで横になってしまったけど、そのときに見えた彼の耳は真っ赤だった。それがかわいくて、愛おしくて、僕の身体は一層熱を持っていた。