こんな世界に一人きりの貴方へ。
「………」
永遠の夜、四月の煌めき。
照らされた生贄の大岩…その上で男は一人座っていた。
四月島において、男のような存在は他にいない。ホムンクルスやデビル、魔女や魔法生物の類はいるが、『概念』そのものでありながらデビルとして成立していないものはいないのだ。
非常に特異で、前例もなく、そして何よりたった一人の固執によって『彼』は成立している。
「今日は静かだ…いや、今日もというべきだろうか?」
そう呟いた通り、生贄の大岩のあるこの場所…東ウィッカに広がる枯れ木の森は、いつにも増してアナザーやデビルの姿が見当たらない。
それもこれも、聖戦期間であるからだ。
聖戦期間中、デビルの半数近くはブースに移っており、アナザーは手当たり次第戦闘を行い、星の欠片を集めてはブースに持ち込んでいく。
そのため、アナザーか彷徨いているわけではないこの枯れ木の森には余計にアナザーが来なくなるのだ。
「………聖戦…七夕…俺には関係の無い話か」
『彼』はそもそも、島のシステムからは外れている存在だ。特段島に害を為すわけでないため黙認されているだけに過ぎない異物である。ハーモニクスを必要とするわけでもなければ、それを用いた奇跡を行えるわけでもない。
そんな概念を、『彼』は持ち合わせていないのだから。
だから、その様子をただただ遠巻きに眺めるだけで、関わろうともしないのだ。
「それを良しとしないだろうな、あのアナザーは…」
はぁ、と溜息をつく。
『彼』をここに繋ぎ止めるアナザーは、当然ながら『彼』を気にかける。
思い出と実物のプレゼントはできる、が…それが何かになるかと言われたら、それこそ単なるアナザーの身勝手にすぎない。
全ては我欲のため。
そこに赤色の真実は成立しない。
だから、なんだ。と『彼』は思うのだが、同時に物足りなさも何処となく理解していた。
好意を周囲に認知させ、承認させたい。
存在を肯定してもらい、祝福されたい。
勝手にやっている、勝手なことという負い目がそこにある以上、その思いが付き纏い続ける。
そう思う必要など無いというのに。
そんなもの、俺にとっては些細なことだというのに。
『彼』はまた一つ溜息をつく。
特に何も出来ない『彼』自身に。
空を眺める。満点の星が流れ行く。
そんな燃え尽きるだけの存在に、願いをかける。
『彼』自身のことを忘れて欲しいなんてものは願わない。それが出来るのならとっくの昔に思い出として昇華されているはずだ。
それが出来ないのなら、かける願いを変えるまで。
そう、自由に対して後ろめたさを感じるというのならば、それこそ。
「あぁ、いっそ忘れてしまえばいい」
END.
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